呼吸臨床
VIEW
---
  PRINT
OUT

「ほぼ週刊 トップジャーナル・ハック!」連載にあたって

公開日:2018.06.15




君はどの論文に興味喚起されるか?

 今月より,トップジャーナルと一般にいわれるNature,Science,NEJMの毎週号の目次から,臨床・呼吸器の視点から面白いかなと思われる論文を,短く紹介することになりました。

 私自身,医学部卒業当初の基礎医学から臨床へ転じた経緯もあり,1980年代半ばのNIH留学時代より,これらの雑誌を個人購読始めました。東北大学加齢医学研究所に赴任後は,研究所の臨床分野であり,先端医学にも対応していたので,毎日昼のセミナーとして,弁当を食べながらトップジャーナルの目次(Top Journal Contents: TJC)を皆でワイガヤしていました。

 大学退職後,結核予防会に勤務し,2015年より清瀬の結研で,複十字病院呼吸器科医師も含め有志の皆さんと週一回,昼に集まって同様のワイガヤをやりました。2017年,仙台戻って後は,脳トレの意味も含め(*),20名前後の先生方に毎週TJCを約1年間メール配信してきました。

(*)70歳を過ぎて,なぜTJCにアクセスするのか?
 私は現役時代には,医療に不満ばかり感じていました。それが21世紀の生物学革命でどう解決され,現実医療にどう反映されていくかを見届けたい。またこの医学激変時代は,加齢によるsarcopenia同様,筋肉運動に相当する脳トレを継続しないとすぐにサイエンス文盲(illiteracy)になりそうです。

 今回,これを「呼吸臨床」に公開してはとの勧めを受け,何人かの先生方の協力をいただきながら,対応することにしました。
以下に,アクセスしてくださる先生方に,「トップジャーナル・ハック」の目的と方法を記しておきます。

<目的>
 21世紀も20年近く経過し,かつて基礎医学と考えられた分子生物学が,実学である臨床医学に押し寄せ,これを無視できない状況になっています。ことに研究方法が,遺伝子改変マウス実験に転じた2000年前後より,Nature,Scienceの論文がマウス個体レベルの解析(すなわち,試験管の実験に比べ,個体の病態を取り扱うので,より臨床に近い)に移行したのです。最近では臨床そのものの論文も増加している。他方,生物製剤と呼ばれる抗体医療の進展は,蛋白分子レベルでの機能の理解がないと,その効果や副作用にも対応ができません。

 こうした急激な変化の中で,多忙な臨床医は何を勉強すればいいのか?実はTJCを読むと,この変化のessenceが理解できるのです。ほぼreal timeに最新の話題にアクセスできる。膨大なインターネット情報網を利用すれば,いつでもどこでも,多国語記載の辞典や多種辞書機能が無償で使えます。過去には考えられなかった効率的な学習法です。いったい次に臨床の世界に何が到来するのか?その理解への準備が「トップジャーナル・ハック」の目的です。

<方法>
 雑誌購読は必要ありません(あるいは将来購読する人が出てくるかもしれないが)。 Nature,Scienceのサイトをブックマークに入れておけば,毎週木曜,金曜に最新号の目次が見られます。この2誌ではほぼ同時に日本語訳も見ることができます。NEJMに関しては,毎週木曜日に新号の目次がメール配信されるので,登録しましょう。この日本語訳もWeb上で見つかります。すなわちこの3誌は,日本語訳から入れる敷居の低さがあります。

 次に,皆さんは対応済みでしょうが,大学勤務医師はVPN接続が有利です。VPN経由ならNatureは抄録も日本語で読めます。さらに勉強したいときには,PubMedから各大学図書館の認証で論文をPDFでダウンロードできます。一般病院勤務医師は,工夫は必要ですが道はあるでしょう。

 もちろん,好きな時間にアクセスすればいいのです。例えばスマホのホーム画面に下記サイトを張りつけておけば,通勤時間でも,医師勤務室のスキマ時間でも,アクセス可能です。

 呼吸器疾患の中で,21世紀になり治療が最初に激変したのは肺癌です。私はその変化の渦中で現役時代を過ごし,つくづくと思います。
「新しい治療は,新しいBiologyからしか生まれない!」

 臨床の近未来の姿を垣間見ることができるのが,3大トップジャーナルです。21世紀の医学はmolecular領域から,さらにstochasticな情報解析の時代へと移行しつつあります。

 時間があれば振って「トップジャーナル・ハック」にアクセスし,個人的バイアスのある解釈や皆さんの関心ある論文へのチャットをお願いします。

東北大学名誉教授
貫和敏博

<URL>
■Nature
英語版 日本語版

■Science
英語版 日本語版

■NEJM
英語版 日本語版