" /> 【特集】呼吸器疾患とマイクロバイオーム■肺癌とマイクロバイオーム■冨田秀太,ほか |
呼吸臨床

【特集】呼吸器疾患とマイクロバイオーム

企画:藤倉雄二


 近年のシーケンス技術進歩により,従来培養が困難であったさまざまな微生物も含め,生体内における微生物叢が比較的迅速かつ網羅的に同定されるようになった。特に腸内細菌叢の領域では先駆的に研究が進んでおり,疾患との関連についてさまざまな知見が蓄積されている。呼吸器領域においても,従来無菌と思われていた下気道には細菌叢・微生物叢が形成されていることが知られるようになり,呼吸器疾患における細菌叢との関係が徐々に明らかになりつつある。細菌叢やそのゲノム情報を含むマイクロバイオームmicrobiomeはヒト個体間のみならず個体内で多様性を有するものの,疾患によりある一定の特徴を有する可能性が指摘されており,その定常状態・破綻した状態と疾患の発症・増悪についての研究が進んでいる。

 本企画では,呼吸器疾患における各領域とマイクロバイオームとの関連について,現在の知見に基づいた最先端の領域を各専門の先生方に解説していただき,興味を深めるとともに,今後の研究・進歩の基盤とすることを目的とした。


肺癌とマイクロバイオーム

冨田秀太*,山本寛斉**,豊岡伸一**

*岡山大学病院ゲノム医療総合推進センター(〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1)


**岡山大学大学院医歯薬学総合研究科呼吸器・乳腺内分泌外科学


Lung microbiome promote lung cancer development

Shuta Tomida*, Hiromasa Yamamoto**, Shinichi Toyooka**


*Center for Comprehensive Genomic Medicine, Okayama University Hospital, Okayama


**Department of General Thoracic Surgery and Breast and Endocrinological Surgery, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences, Okayama


Keywords:肺癌,マイクロバイオーム,細菌叢,メディエーター,γδT17細胞,好中球,IL-17/lung cancer, microbiome, bacterial flora, mediator, γδT17 cell, neutrophils, IL-17


呼吸臨床 2021年5巻3号 論文No.e00116
Jpn Open J Respir Med 2021 Vol.5 No.3 Article No.e00116

DOI: 10.24557/kokyurinsho.5.e00116


掲載日:2021年3月22日


©️ Shuta Tomida, et al. 本論文の複製権,翻訳権,上映権,譲渡権,貸与権,公衆送信権(送信可能化権を含む)は弊社に帰属し,それらの利用ならびに許諾等の管理は弊社が行います。


要旨

 近年「第2のゲノム」として細菌叢を含む微生物叢(マイクロバイオーム)が注目されている。腸内細菌叢の解析が先行する形で疾患のみならず,“健常”状態の維持にも細菌叢が極めて重要な機能を担っていることが示されたことから,細菌叢のカタログ作りと機能解析が加速した。また本邦研究者によって細菌叢と腫瘍形成との関連性が直接的に示されたことから,癌と細菌叢との因果関係を解析する研究も精力的に展開されている。そんな中,肺癌研究者による肺癌と細菌叢の関連性を解析した報告も近年相次いでいる。本稿では癌研究と細菌叢に焦点をあてて解説する。

文献

  1. Turnbaugh PJ, et al. An obesity-associated gut microbiome with increased capacity for energy harvest. Nature. 2006; 444: 1027-31.
  2. Cho I, et al. Blaser The human microbiome: at the interface of health and disease. Nat Rev Genet. 2012; 13: 260–70.
  3. Arumugam M, et al. Enterotypes of the human gut microbiome. Nature. 2011; 473: 174-80.
  4. Yoshimoto S, et al. Obesity-induced gut microbial metabolite promotes liver cancer through senescence secretome. Nature. 2013; 499: 97-101.
  5. Iida N, et al. Commensal bacteria control cancer response to therapy by modulating the tumor microenvironment. Science. 2013; 342: 967-70.
  6. Jin C. et al. Commensal microbiota promote lung cancer development via γδ T cells. Cell. 2019; 176: 998–1013.
  7. Dickson R, et al. The microbiome and the respiratory tract. Annu Rev Physiol. 2016; 78: 481-504.
  8. Marsland B, et al. Host–microorganism interactions in lung diseases. Nat Rev Immunol. 2014; 14: 827–35.