[Essays] A tale of two domains: "breathing movement" and "gas-exchange/lung science" - A personal history and the significance of breathing in the respiratory medicine
No 4: Introduction to Fascia: What is the basic structure for the continuity of soma and transmission of the respiration movement?
Toshihiro Nukiwa*
*Professor Emeritus, Tohoku University
呼吸臨床 2018年2巻4号 論文No.e00058
Jpn Open J Respir Med 2018 Vo2. No. 4 Article No.e00058
DOI: 10.24557/kokyurinsho.2.e00058
掲載日:2018年4月9日
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(第3回はこちら)
はじめに
前回は「呼吸」運動が実は全身に連動する事実とその関連領域を概説した。哺乳動物は時に呼吸とともに伸びをする。人間ではストレッチ感と爽快感を伴う。そうした全身的反応は,現代医学では表に出ない,埋められた領域である事実も述べた。一体,身体解剖で全身を結びつけている構造は何か? それが,最近米国を中心に欧米で関心が集まるFasciaと呼ばれる腱・筋膜系である[1]。今回はFascia序論として,その一部を紹介する。
こうした点に筆者が関心を持つのは,30年にわたり西野流呼吸法を楽しんできたからである。その中に「対気」と呼ぶ,相互の身体にシグナル(感覚としては存在するが実態は不明)を送り合う稽古がある。その結果受け手の全身が反応し,他のスポーツでは経験できない,deepでrichな身体感覚(背伸びのstretch感覚に似ているが,全身の衝撃を伴う)で,多くの場合相手から感謝される。この衝撃感覚や相手に感謝される不思議さが,私にとって西野流呼吸法(え! 呼吸法だのに? という疑問を持たれるだろう。むしろ新しい,いわば二人呼吸法という面がある)の持続する魅力である。
ここにみられる,全身を連携し機能する解剖学的身体構造はFascia以外にはありえない。第4回ではこうした点で,多方面からFasciaを考えてみよう。ある意味,細胞の産生したECM(extracellular matrix)は,それを使って相互に接着することからなる多細胞生物体である「動物」の進化上からも,基盤的問題ともいえる。