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[Essays] A tale of two domains: "breathing movement" and "gas-exchange/lung science"
- A personal history and the significance of breathing in the respiratory medicine
No 8-2: Everything starts from a bombardment sense in the deep body: the Nishino Breathing Method (1)Basics – Sokushin-kokyu (breathing with body awareness); An interoceptive training for Soma awake
Toshihiro Nukiwa*
*Professor Emeritus, Tohoku University
呼吸臨床 2019年3巻2号 論文No.e00077
Jpn Open J Respir Med 2019 Vo3. No.2 Article No.e00077
DOI: 10.24557/kokyurinsho.3.e00077
掲載日:2019年2月22日
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(第7回はこちら)
Exteroception & Interoception
自分の身体の部位を次々意識すると言う訓練法,一般にbody awarenessと呼ばれている訓練法がある。先にも述べたが,足芯呼吸はこの訓練法に通じると考えられる。これはNeuroScience領域でどう考えられているのか?
少し込み入った話をすることになる。タイトルは聞き慣れない用語である。
医学領域においても,おそらくまだ神経領域の一部の研究者にしか知られていない用語だろう。第7回では,Insulaを紹介したCraig ADの総説を引用した[3]。ここではTED Presentationでもconsciousnessに関してユニークな発表[4]をしているDamasio Aの総説[5]を引用しよう。
中枢神経系(CNS,脳を含む脊髄神経系の総称。ここでは客観的な意味より,こうした神経統合体が地球上で40億年以上をかけ進化し到達した結果として,ホモサピエンスが現在あるのだと,感動しながら理解していきたい)は当然のことながら内部状況,外部環境を四六時中monitorしている(図3)。
図3 ExteroceptionとInteroception概念図
(この図には人間が描かれているが,こうした基本的生命機構に対して,進化したヒトの大脳はあまり関係ない。マウス,ラットでもこの図は同じといえる)
外部感覚器官からの情報input(exteroception)はよく知られている。しかし内部受容感覚(interoception)は「痛み」や「発熱」など具体的でないとほとんど意識することはない。しかし生命に基盤的な対応としてのdrivesやemotions,あるいはfeelingsなどのアウトプットはその無意識流れの中で形成されている。
第8回の本文中で述べているinteroceptionあるいはbody awarenessの修行は,この内外の流れを意図的に強化すると考えると,高僧の教えとしての「軟酥の法」やmindfulnessにおける「body scan」等は,この図に見られる流れの中で意味を持つのではないか(であるから同様の足芯呼吸が具体的に訓練しているのは,Body awarenessの中枢ではないのか)? それは21世紀に入り使用されるようになったfunctional MRI研究で,関心が集まるinsula(島)を中心とする延髄から基底核への神経核機能である。足芯呼吸のように一見意味不明と思われる訓練は,筋肉トレーニングで強化する身体とは当然次元が異なる。(文献[5]より引用)
内部環境をsensingするのがInteroceptive system(例えば,内臓消化管の平滑筋収縮の程度,心調律,血液など内部体液における主要代謝産物濃度など)である,これらの情報は脳幹部感覚領域に送られ,interoceptive mapとして提示される。
一方,外部環境は古来より知られ,仏教の般若心経にも述べられるexteroceptive感覚(嗅覚,味覚,触覚,聴覚,視覚)はCNS感覚野領域で外界地図(exteroceptive map)として提示される。
これらのmonitorによる情報の変化に対し,生体はプログラムされた本能的innateな諸々のaction programを発動する。それらはDrivesとEmotionsに大別される。
Drivesとは現実的な駆動としての反応で,例えば空腹,渇き,性欲,探索,遊び,育児,周囲の近親個体への執着などである。
Emotionsとは嫌気,恐れ,怒り,悲しみ,喜び,羞恥,恥辱,誇り,哀れみと同情,尊敬などで,これらは外界からの刺激に起因して発動する。そしてこれらの反応はさらに身体に影響をもたらす。その身体反応はinteroceptive systemでsensingされ,CNSで統合される(図3)。これらは通常意識されることはないが,一部feelingsとして意識される。
Feelingsとは,身体状況に起こった変化に伴う心的経験である。これも通常は意識されることはないが,上述したaction programによって惹起されるものである。
こう述べると,まるで哲学的な解釈のようであるが,Damasioの総説[5]ではInteroceptiveな情報処理は,脳幹部,視床,そして大脳皮質の最深奥のinsula(島)が実際のCNSの対応領域である(図4)。この領域は,こうした内・外情報を統括することにより,意識や自意識(selfhood)に関連する[6](ただし,Damasioは実験的,また病的脳損傷の症例などより,Interoceptionは必ずしもinsulaのみの機能ではないと述べている)。
図4 Interoceptive pathwayにおける延髄,脳幹,視床,Insula
図3に示されたinput,outputにおける中枢部として,脳幹,視床下部,視床,島などを結ぶ回路が示されている。それぞれの位置に存在する神経核におけるoutput,input,双方向性,一方向性などに関しては文献5の総説に詳しい。ここで注目したいのは,身体情報伝達として大きな経路は脊髄後根を上行するLamin Iと,内蔵情報を伝達する迷走神経(Vagus)である。そして脳幹神経核での複雑な処理の後,視床下部から視床を経て大脳新皮質へは,Insulaを介して送達される。同様のinsulaをhubとする図はSeth AKの総説にも見られる[6]。具体的な脳の図は図5も参照。
すなわち進化的に旧い脳である脳幹・視床系と,二足歩行獲得以降拡大する大脳新皮質への交差点が,Insulaであると,この図から理解される。こうした点がfunctional MRIの情報と共に近年Insulaへの関心の高まる理由であろう。
(文献[5]より引用)