貫和敏博*
*東北大学名誉教授
[Essays] A tale of two domains: "breathing movement" and "gas-exchange/lung science"
- A personal history and the significance of breathing in the respiratory medicine
No 12-3: Paired-signaling physiology, a novel frontier of human physiology: Basic medical science and clinical apprication: (3) The body-trunk engine system (basal ganglia and central pattern generators of the spine) controls the locomotion movement of the epaxial and hypaxial muscles: The relation of the oriental bodywork to the trunk system is suggested by the 21st century brain science.
2) MLR and Spinal cord CPGs, the Locomotion working system: what is the structure and what are they doing?
呼吸臨床 2021年5巻6号 論文No.e00126
Jpn Open J Respir Med 2021 Vo5. No.6 Article No.e00126
DOI: 10.24557/kokyurinsho.5.e00126
掲載日:2021年6月7日
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大脳基底核の機能が,運動内容の詳細に関与するのではなく,その開始命令であるというのは,運動といえば複雑で優雅な姿を知る我々には意外である。そして大脳基底核が関与する体幹エンジンシステムでは,実はくねり運動の実体(それは哺乳類四足動物では左右交互に足を動かすシステム)が脊髄CPGsにあるといわれても,常識的運動モデルからは理解ができない。
常識的モデルとは,例えばPenfieldのホムンクルス像である(
脳科学辞典)。大脳皮質運動野や感覚野には我々のbody mapが存在する。手足を動かすにはこの運動野司令が関与するという理解である。しかし不思議なことに,このホムンクルスには体幹部がほとんどない。
なぜ胴体部がわずかしか示されないのか? 長年の疑問であった。
考えて見れば,このホムンクルス地図はヤツメウナギ後の脊椎動物進化系統で増大(例の「建て増し」)した大脳新皮質が対応をしている身体部位である。しかし,進化的に旧い体幹筋の基盤となる全身運動は,大脳基底核+CPGsが対応していると理解すれば,ホムンクルスには体幹部を示す部分がわずかしかないと,頭の整理になる。言うまでもなく体幹くねり運動主体のヤツメウナギには大脳新皮質がほとんどない。
実際,神経学教科書としてよく使われてきた「リープマン神経解剖学」[17]においても,この部の詳細な記載はない。2008年の日本語訳第3版では,「第9章 大脳皮質下の運動中枢」で大脳基底核が紹介されている。しかし本章で示すような記述ではない。錐体外路系(extrapyramidal)という言葉も使用されているが,最近では使われないこと,またその専門的知識は非常に不完全で,新発見で修正がありうると述べられている。
しかしその部分の図には,網様体脊髄路,あるいは赤核脊髄路は示されている。この脊髄路の部分が,以下に記す中継部として説明する神経路となる。
医学生として学習するのが嫌となるような複雑さであるが,恐らくカンブリア紀数千万年の間に脊髄動物体幹筋運動系が整備されていく間の多重redundantな遺残構造的な意味があると思われる。しかし重要なことは,この段階で延髄左右の神経交連が始まる点である。