" /> 【連載】呼吸との出会いと呼吸器との出会い:個人的履歴と呼吸器臨床における「呼吸」の意義■第13回(Update 2024) 呼吸筋群としてのPrimaxial/Abaxial筋群の理解と呼吸法:MMC/LMC*とPrimaxial/Abaxial体幹筋群の関連を理解する■貫和敏博ほか |
呼吸臨床

【連載】呼吸との出会いと呼吸器との出会い:個人的履歴と呼吸器臨床における「呼吸」の意義


第13回(Update 2024) 呼吸筋群としてのPrimaxial/Abaxial筋群の理解と呼吸法:MMC/LMC*とPrimaxial/Abaxial体幹筋群の関連を理解

貫和敏博

(東北大学名誉教授)


重田哲哉

(北関東循環器病院整形外科)


*MMC: medial motor column, LMC: lateral motor column


[Essays] A tale of two domains: "breathing movement" and "gas-exchange/lung science"

- A personal history and the significance of breathing in the respiratory medicine

No 13: Unraveling the Role of Primaxial and Abaxial Muscles: Implications for Breathing and Trunk Locomotion. MMC/LMC built-in circuit in spine and primaxial/abaxial muscles in body trunk.


Toshihiro Nukiwa

Professor Emeritus, Tohoku University


Tetsuya Shigeta 

Orthopedics, Kita-Kanto Cardiology Hospital


呼吸臨床 2024年8巻4号 論文No.e00187
Jpn Open J Respir Med 2024 Vol.8 No.4 Article No.e00187

DOI: 10.24557/kokyurinsho.8.e00187


掲載日:2024年4月1日


©️Toshihiro Nukiwa, et al. 本論文の複製権,翻訳権,上映権,譲渡権,貸与権,公衆送信権(送信可能化権を含む)は弊社に帰属し,それらの利用ならびに許諾等の管理は弊社が行います。


(第12回3-3はこちら

はじめに

 現役を退いた70歳以降,人生の「宿題」として,日常的に実践する「呼吸」運動論を考えてきた。歴史の古い課題であるが,西欧医学共通言語では説明されることがないからである。
説明できない理由の一つは,そもそも西欧医学が成人解剖知見に基づく点である。

 我々の身体は進化を基礎とした発生過程を経たもので,こうした面の分子生物学的方法論は21世紀医学の領域となる。 ここに紹介する本間らの脊髄神経枝解釈(2023年)[1]はまさにこの点を取り上げている。

 そして後にPrimaxial/Abaxialとして紹介する体幹軸発生の考え方を通して,体幹筋群による呼吸・Locomotion運動上の重要性が挙げられる。もちろん,呼吸器内科の担当臓器は「肺」である。肺を巡る感染,炎症,腫瘍などが呼吸器疾患を形成し,その病因,治療介入などが呼吸器内科医の大きな関心ごとである。しかしそれは西欧医学という,現在の医学大系の枠の中での思考体系でもある。

 「呼吸」運動は,単に肺という臓器,ガス交換という機能を離れて,実は脊椎動物進化論的には全身的built-in-CPGの一部として基盤的システムである姿が見えつつある。
 一方で西欧論理系と異なる東洋系身体論の体系では,「呼吸」運動は古来最も重要な事象である。しかしなぜそれが全身に関わるのか,なぜ重要なのかの実際は,経験的な伝承が主体で,残念ながら説明されていない。

 本間らの論文は発生学的運動神経・体幹筋システムが,まさに東洋系Bodywork(呼吸法等)を説明することを示唆する。本誌にUpdate 2024として紹介する理由である。

文献

  1. Homma S, et al. A three-component model of the spinal nerve ramification: Bringing together the human gross anatomy and modern embryology. Front Neurosci. 2023; 16: 100954.
  2. 貫和敏博. 呼吸との出会いと呼吸器との出会い:個人的履歴と呼吸器臨床における「呼吸」の意義,第1回 呼吸との出会い. 呼臨. 2017; 1: e00023.
  3. Grillner S, et al. Current principles of motor control, with special reference to vertebrate locomotion. Physiol Rev. 2020; 100:271-320.
  4. 貫和敏博. 呼吸・歩行のcentral pattern generatorsシステムと東洋系bodyworkによる医療応用の可能性:錐体外路系・体幹前進運動システムを考える.Brain Nerve. 2022; 74:1053-9.
  5. 貫和敏博. 好きになる呼吸法/はじめてのdeep body 衝撃・爽快感に驚き呼吸法が好きになる.内科. 2022; 130: 969-74.
  6. 西野皓三. 西野流呼吸法/ときめいて生きる [VHS]. 1991.
  7. 貫和敏博. 呼吸との出会いと呼吸器との出会い:個人的履歴と呼吸器臨床における「呼吸」の意義,第12回 人体生理学新領域paired signaling physiology:その基礎医学研究と臨床研究,(3)体幹エンジンシステム〔大脳基底核+脊髄CPGs(central pattern generators)〕が制御する体幹筋群locomotion運動:21世紀脳科学が示唆する東洋系操体との関連,1)「深身体」である体幹エンジン運動体とはどんなシステムか?. 呼臨. 2021; 5 : e000125.
  8. Alaynick WA, et al. SnapShot: spinal cord development. Cell. 2011; 146: 178-178.e1.
  9. Sadler TW. ラングマン人体発生学(Langman’s Medical Embryology),第11版. 安田峯生他訳. 東京: メディカル・サイエンス・インターナショナル, 2016.
  10. Burke AC, et al. A new view of commentary patterning domains in the vertebrate mesoderm. Dev Cell. 2003; 4: 159-65.
  11. 貫和敏博. 呼吸との出会いと呼吸器との出会い:個人的履歴と呼吸器臨床における「呼吸」の意義,第8回 すべては全身への衝撃感から始まった-西野流呼吸法(1)基礎:足芯呼吸/fMRI研究が示すSomaへの覚醒シグナル. 呼臨. 2019; 3: e00077.
  12. 石井直方ほか. プロが教える筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典. ナツメ社, 2012.