呼吸臨床

【特集】肺疾患のあらたな診断手技としてのクライオバイオプシー

企画:武村民子


 肺の腫瘍性疾患ならびにびまん性肺疾患の診断のために,これまでのTBLBや,VATSなどの外科的肺生検が行われてきました。欧米では近年,肺生検に関してはクライオバイオプシーが主流になりつつあります。クライオバイオプシーは経気管支的に窒素または炭酸ガスをプローベ内に循環させ,組織を凍結して採取してくる新しい技術です。本年,わが国においても保険適用が決まり,今後クライオによる診断が増加してくると思われます。そこで今回,クライオバイオプシーについてのミニ特集を企画しました。

病理診断の実際

奥寺康司*


*横浜市立大学医学部病態病理学講座(〒236-0004 神奈川県横浜市金沢区福浦3-9)


Application of cryoprobe biopsy: pathological diagnosis


Koji Okudela*

*Department of Pathology, Yokohama City University Graduate School of Medicine, Yokohama


Keywords:クライオ生検,びまん肺性疾患,間質性肺炎/cryoprobe biopsy, diffuse lung disease, interstitial pneumonia


呼吸臨床 2017年1巻2号 論文No.e00004
Jpn Open J Respir Med 2017 Vol. 1 No. 2 Article No.e00004

DOI: 10.24557/kokyurinsho.1.e00004


掲載日:2017年11月6日


©️Koji Okudela. 本論文の複製権,翻訳権,上映権,譲渡権,貸与権,公衆送信権(送信可能化権を含む)は弊社に帰属し,それらの利用ならびに許諾等の管理は弊社が行います。


要旨

 近年(2010年あたりから),肺腫瘍の確定診断・遺伝子検査ばかりでなく,びまん性肺疾患の鑑別診断にもクライオ生検が適用されるようになってきた。クライオ生検では,小葉細気管支よりも中枢レベルの気管支の壁を突き破るかたちで,小葉の辺縁部から中心部に向けて10mm程度の組織片が採取される。びまん性肺疾患の病型の鑑別には,小葉・細葉内における病変の分布が非常に重要である。クライオ生検で採取された組織は,細葉・亜細葉を網羅しており,びまん性肺疾患の確定・病型判定に十分な情報が得られる。実際,当施設で実施されたクライオ生検80件の全例において細葉・亜細葉の一部が観察でき,びまん性肺疾患の確定診断・病型判定に有用な情報が得られた。本項では,また,クライオ生検組織における病理診断の実際について,特にびまん性肺疾患に言及して紹介する。

文献

  1. Hetzel J, et al. Cryobiopsy increases the diagnostic yield of endobronchial biopsy: a multicentre trial. Eur Respir J. 2012; 39: 685-90.
  2. Aktas Z, et al. Endobronchial cryobiopsy or forceps biopsy for lung cancer diagnosis. Ann Thorac Med. 2010; 5: 242-6.
  3. Schumann C, et al. Cryoprobe biopsy increases the diagnostic yield in endobronchial tumor lesions. J Thorac Cardiovasc Surg. 2010; 140: 417-21.
  4. Segmen F, et al. How many samples would be optimal for endobronchial cryobiopsy? Surg endosc. 2017; 31: 1219-24.