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呼吸臨床
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【投稿/原著】改変Ultrafast Papanicolaou染色を用いたRapid on site evaluationの紹介


石橋昌幸*1,鈴木明美*2,佐塚まなみ*1,野木森智江美*1,山田浩和*1,新井冨生*2,山本 寛*1


*1東京都健康長寿医療センター呼吸器内科(〒173-0015 東京都板橋区栄町35-2),*2同病理診断科


Introducing Rapid On site Evaluation by using Modified Ultrafast Papanicolaou Staining


Masayuki Ishibashi*1, Akemi Suzuki*2,Manami Sazuka*1, Chiemi Nogimori*1,Hirokazu Yamada*1, Tomio Arai*2,Hiroshi Yamamoto*1


*1Department of Respiratory Medicine, Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital, Tokyo

*2Department of Pathology, Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital, Tokyo


Keywords:迅速細胞診,オンサイトでの迅速細胞診,ディフ・クイック染色,迅速パパニコロウ染色,改変迅速パパニコロウ染色/immediate cytologic diagnosis,rapid on site evaluation,Diff-Quik®staining,ultrafast Papanicolaou staining,modified ultrafast Papanicolaou staining


呼吸臨床 2020年4巻4号 論文No.e00100
Jpn Open J Respir Med 2020 Vol. 4 No. 4 Article No.e00100

DOI: 10.24557/kokyurinsho.4.e00100


受付日:2020年3月10日
掲載日:2020年4月28日


©️Masayuki Ishibashi, et al.  本論文はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスに準拠し,CC-BY-SA(原作者のクレジット[氏名,作品タイトルなど]を表示し,改変した場合には元の作品と同じCCライセンス[このライセンス]で公開することを主な条件に,営利目的での二次利用も許可されるCCライセンス)のライセンシングとなります。詳しくはクリエイティブ・コモンズ・ジャパンのサイト(https://creativecommons.jp/)をご覧ください。





要旨

 Rapid on site evaluationは,気管支鏡検査中に実施する迅速細胞診として,有用性が報告されている。本邦で頻用されるrapid on site evaluationの染色法は,Diff-Quik®染色またはUltrafast Papanicolaou染色であるが,検体処理で風乾に時間を要し,判定までの時間が一定しない点が,気管支鏡検査進行上の難点であった。この問題を解決するため,我々は,Ultrafast Papanicolaou染色に改変を加え,風乾を省略した染色法を考案した。本稿では,この改変Ultrafast Papanicolaou染色について紹介する。
  
 症例1は82歳男性。気管支鏡下生検で非小細胞肺癌と診断され,rapid on site evaluationも陽性であった。症例2は74歳女性。経気管支穿刺吸引細胞診で非小細胞肺癌と診断され,rapid on site evaluationも陽性であった。改変Ultrafast Papanicolaou染色は,多くの気管支鏡検査施設で実施可能な染色法と考えられた。


はじめに

 Rapid on site evaluation(ROSE)は,診断精度の向上や穿刺回数の軽減に寄与することが複数の検討で報告されている,気管支鏡中に迅速細胞診を実施する検査法である[1]〜[7]。ROSEの染色法では,Diff-Quik®(DQ)染色やUltrafast Papanicolaou(UFP)染色などが広く用いられているが,いずれの染色法も,採取直後に風乾を要する[8]ため,風乾に要する時間が長い場合,円滑な気管支鏡検査の進行に支障を来す可能性があり,我々は,UFP染色に改変を加え,検体採取直後の風乾を省略した改変Ultrafast Papanicolaou染色(改変UFP染色)を考案した。本染色法を運用して気管支鏡検査を行った2症例における,DQ染色やPap染色,UFP染色と比較したその染色性の違いや時間管理における有用性について報告する。

改変UFP染色手順

 試薬:95%エタノール,Rapid Fix®(武藤化学,Cat.20011,Tokyo),Hematoxylin2®(ThermoFisher,Cat.7231JP,MA),Cyto-Stain®(ThermoFisher,Cat.7511JP,MA),キシレン。
 
 染色方法表1):採取検体をスライドガラスへ塗抹し,95%エタノールで湿式固定(2秒)した後,Rapid Fix®をスライドガラスへ数滴滴下する(5秒)。続いて,95%エタノールへ再度浸漬し(2秒),水洗して,Hematoxylin2®の染色液中へスライドガラスを数回出入し核染する(5秒)。再度水洗して95%エタノールへ浸漬し(5秒),Cyto-Stain®の染色液中へスライドガラスを浸漬する(40秒)。Cyto-Stain®の染色後,95%エタノールとキシレンで脱水および透徹する(5秒)。 当院では,気管支鏡検査室内で水洗も含め,すべての染色工程を完結している。

表1 各染色法の染色手順と所要時間の比較


症例1(図1,2

 症例:82歳,男性。
 現病歴:糖尿病で通院中に,左下葉結節を指摘され,当科紹介となった(図1a)。
 気管支鏡検査所見:左B10aへRadial EBUSを挿入し,withinを試みるもadjacent toであった。同部位でTBBを施行し,withinでなかったことから,#7リンパ節に対しての穿刺吸引細胞診(transbronchial needle aspiration:TBNA)も並行して実施した(図1b,c)。

  病理所見:TBB検体のH.E.染色では腫瘍細胞が充実性胞巣を形成して増殖しており(図1d),p40染色陽性(図1e)で,CK5/6染色陽性(図1f)であった。Non-small cell carcinoma,favor Squamous cell carcinomaと診断した。ブラシ擦過細胞診では,DQ染色で大小不同の核を有する大型の細胞集塊を認めたが(図2a),核と胞体の判別やクロマチンなどの核内構造の観察は困難であった。一方,Pap染色では,N/C比が高く,核内部のクロマチンが粗造で核の大小不同も高度な類円型の核を有する異型細胞の集塊が認められた(図2b)。これに対し,改変UFP染色ではPap染色と同様の異型細胞が認められ,その核は明瞭で,核内構造の弁別もPap染色と同様に可能であった(図2c)。TBNA検体の細胞診所見も,ブラシ擦過細胞診と同様であった(図2d:DQ染色,図2e:Pap染色,図2f:改変UFP染色)。

図1 症例1の臨床画像所見と病理組織所見
a. FDG-PET検査で左下葉と縦隔リンパ節に集積を認める。
b. 左B10aへ挿入したRadial EBUS所見は “adjacent to” であった。
c. #7リンパ節に対するEBUS-TBNA。d. 経気管支生検検体のH.E.染色,400倍。
e. p40免疫染色,400倍。f. cytokeratin5/6免疫染色,400倍。


図2 症例1の細胞診所見
a. 経気管支生検検体のDQ染色,600倍
b. Pap染色,600倍
c. Modified UFP染色,600倍
d. TBNA検体のDQ染色, 600倍
e. Pap染色,600倍
f. Modified UFP染色,600倍



症例2(図3

 症例:74歳,女性。
 現病歴:咳嗽と血痰で,当院へ緊急入院。入院後肺腫瘤を指摘され,当科紹介となった(図3a)。
 気管支鏡検査所見:右上葉原発巣と一塊になった#2Rリンパ節に対して,TBNAを施行した(図3b)。

 病理所見:Pap染色,UFP染色のいずれにおいても,N/C比が高く,胞体の大小不同と核の大小不同共に高度で,核内部のクロマチンも粗造な類円型の核を有する異型細胞が多数認められた(図3c:Pap染色,図3d:UFP染色)。一方,改変UFP染色においても同様の所見で,核内構造の弁別も可能であった(図3e:改変UFP染色)。TBNAコア検体を用いたH.E.染色では,腫瘍細胞が充実性胞巣を形成して増殖しており(図3f),TTF-1染色陽性(図3g),Napsin A染色陽性(図3h)であった。Non-small cell carcinoma, favor adenocarcinomaと診断した。

図3 症例2の臨床画像所見と病理所見
a. FDG-PET検査で右上葉と#2Rリンパ節に集積を認める
b. #2Rリンパ節に対するEBUS-TBNA
c. TBNA検体のPap染色, 600倍
d. UFP染色,600倍
e. Modified UFP染色,600倍
f. H.E.染色,600倍
g. TTF-1免疫染色,600倍
h. Napsin A免疫染色,600倍

考察

 ROSEは,気管支鏡検査中にブラシ擦過検体やTBNA検体の塗抹,TBB検体の捺印を用いて,短時間のうちに採取検体内の異型細胞の有無やTBNA検体の適正を評価する検査法である。

 染色について,検査技師でなく医師が実施する施設もあり,簡便で試薬管理が比較的容易なDQ染色は,ROSEの染色法としても広く普及している[4]。しかしながら,Pap染色やUFP染色と比較して,核と胞体の判別やクロマチンなどの核内構造の観察を行うには染色性が不十分であり,採取検体内の異型細胞の有無を評価する場合,細胞診断士であってもその評価はときに難しく,一般の医師が判定する際には判断を誤る可能性もある。

 UFP染色は,Yangらが乾燥標本でも迅速簡便にPap染色と同様の透明感を得られる染色として考案した方法で[8],ROSEとしての有用性については,Bandohらが検討し報告している[1]。この染色法はPap染色と同様に核内構造の観察が可能で,気管支線毛上皮などの刷子縁も同定でき,異型細胞と反応性上皮細胞の鑑別も可能であるが,DQ染色と比較して使用する試薬の種類が多く,長い染色時間を要する(表1)。しかし,噴霧麻酔や鎮静剤の作用時間を考慮すれば,可能な限り検査時間は短縮すべきであり,時間管理を要する気管支鏡検査において,これは克服すべき課題と考えられる。

 DQ染色とUFP染色は,いずれも採取後の検体を乾燥固定するという点が共通している。乾燥固定には一般に風乾が用いられるが,これに要する時間はまちまちで,1分以上を要することもある。

 我々はこの採取検体の風乾に着目し,これを省略して95%エタノールによる湿式固定とする改変UFP染色を考案した。この染色法では,固定時間が各回約2秒に大幅に短縮・統一され,これにより風乾を要する染色法では困難であった気管支鏡検査の時間管理が極めて容易になった。症例1では,ブラシ擦過検体・TBNA検体ともに,DQ染色よりも異型細胞の特徴が捉えやすい染色法であることが示唆され,症例2では,UFP染色と同等の染色性であることが示唆された。表1に示すとおり,改変UFP染色はDQ染色と比較して染色工程が多いが,これは水洗と95%エタノールへの浸漬が複数回あるためであり,また,一見改変UFP染色の方がDQ染色より所要時間が長いように見えるが,DQ染色の所要時間50秒には,風乾の工程が含まれておらず,これに風乾に要する時間を加えれば,改変UFP染色の64秒よりも長時間におよぶことは明らかであり,また所要時間も一定しない。一方,改変UFP染色は風乾工程がないため,染色所要時間が短縮され,しかもそれはおおむね一定であり,気管支鏡検査全体における時間管理が極めて容易である。また,UFP染色と比較すると必要な試薬数も少なく,限られた検査室内でも実行可能である。UFP染色が改変UFP染色に勝る点を挙げるとすれば,検体塗抹処理が不適切であっても,UFP染色であれば,乾燥固定と再水和処理によって,胞体の良好な染色性を得られることが挙げられる。しかしながら,改変UFP染色においても,薄い塗抹を心がけることでこれは実現可能である。そして薄い塗抹はPapanicolaou染色用の検体処理においても重要な手技であるため,通常の気管支鏡検査における検体処理に習熟している臨床医ならば,改変UFP染色においても染色性の問題は生じない[9]。

 もっとも,本報告は改変UFP染色をROSEに用いた2例の報告に過ぎず,本染色法の診断精度と所要時間,およびその安全性について,前向きに検証することが望ましく,今後の検討課題と考えられた。

 本邦における気管支鏡検査の現場では,医師がROSEを実施している施設も多い。そのため,Pap染色やUFP染色と同等の染色性が得られ,試薬の種類が少なく,湿式固定のため時間管理が容易な,改変UFP染色によるROSEの導入は,気管支鏡検査における質の向上に貢献し得ると考えられた。

結語

 改変Ultrafast Papanicolaou染色は,Papanicolaou染色やUltrafast Papanicolaou染色と同様に腫瘍細胞を評価することが可能で,気管支鏡検査の時間管理が容易で,多くの施設で気管支鏡検査時に実行可能な,染色法と考えられた。

 COI開示:本論文に関連する開示すべき利益相反関係にある企業等はない。

Abstract

 Background: Rapid on-site evaluation of cytologic smears plays an important role in diagnostic bronchoscopy. Although Diff-Quik® staining and Ultrafast Papanicolaou staining are widely used in Japan for rapid on-site evaluation, they require a time-consuming “air drying” step that can be an obstacle to smooth bronchoscopy. We developed a new staining method that does not require air drying by modifying the Ultrafast Papanicolaou staining protocol. Here, we introduce our “modified Ultrafast Papanicolaou staining” method. 


 Case: Case 1. An 82-year-old man was diagnosed with non-small cell lung carcinoma, favor squamous cell carcinoma, by transbronchial biopsy. The rapid on-site evaluation result using our modified method was positive. Case 2. A 74-year-old woman was diagnosed with non-small-cell lung carcinoma, favor adenocarcinoma, by transbronchial needle aspiration. The rapid on-site evaluation result using our method was positive.  


 Conclusion: These cases support that modified Ultrafast Papanicolaou staining is suitable for rapid on-site evaluation for diagnostic bronchoscopy.


図表


文献

  1. Bandoh S, et al. Diagnostic accuracy and safety of flexible bronchoscopy with multiplanar reconstruction images and ultrafast Papanicolaou stain: evaluating solitary pulmonary nodules. Chest. 2003; 124: 1985-92.
  2. Bando K, et al. Utility of immediate cytologic diagnosis of lung masses using ultrafast Papanicolaou stain. Lung Cancer. 2011; 72: 172-6.
  3. Bonifazi M, et al. The role of the pulmonologist in rapid on-site cytologic evaluation of transbronchial needle aspiration: a prospective study. Chest. 2014; 145: 60-5.
  4. Hopkins E, et al. Accuracy of rapid on-site evaluation of endobronchial ultrasound guided transbronchial needle aspirates by respiratory registrars in training and medical scientists compared to specialist pathologists-an initial pilot study. J Thorac Dis. 2018; 10: 3922-7.
  5. Oki M, et al. Rapid on-site cytologic evaluation during endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration for diagnosing lung cancer: a randomized study. Respiration; international review of thoracic diseases. 2013; 85: 486-92.
  6. Sehgal IS, et al. Impact of Rapid On-Site Cytological Evaluation (ROSE) on the diagnostic yield of transbronchial needle aspiration during mediastinal lymph node sampling: systematic review and meta-analysis. Chest. 2018; 153: 929-38.
  7. Uchida J, et al. Improved diagnostic efficacy by rapid cytology test in fluoroscopy-guided bronchoscopy. J Thorac Oncol. 2006; 1: 314-8.
  8. Yang GC, et al. Ultrafast Papanicolaou stain. An alternative preparation for fine needle aspiration cytology. Acta Cytol. 1995; 39: 55-60.
  9. 児島宏哉, ほか. 気管支鏡検査ROSEにおけるUltrafast Papanicolaou染色検討. 日臨細胞会誌. 2019; 58: 288.