呼吸臨床
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「ほぼ週刊 トップジャーナル・ハック!」No.1

公開日:2018.06.17


今週のジャーナル


Nature Vol. 558, No.7708(2018年6月7日)日本語版 英語版

Science Vol. 360, Issue #6393(2018年6月8日)日本語版 英語版

NEJM Vol. 378, No. 23(2018年6月7日)日本語版 英語版





喘息に神経内分泌細胞が絡む? 気道自然免疫細胞との新たな展開!

●Nature

(1)ラボのメンバーに多様性があることが研究にとっていいという記事がEditorial(Improving the participation of under-represented groups is not just fairer — it could produce better research)とNews Features(These labs are remarkably diverse — here’s why they’re winning at science)で述べられている。色々な人々に門戸を開くことが倫理的にも正しく,また優れた競争力に繋がって成果が出そうなことは何となくわかる気がするが,ある調査では論文の著者陣の多様性のなかでも特に人種多様性と論文の引用率(おそらく良い論文ということ)が相関するということについての記載もあって興味深い。

論文では,Articleでは
(2)ヒト血漿プロテオームのゲノムアトラスの論文(Genomic atlas of the human plasma proteome)。SOMAscanという特定の蛋白に結合する一本鎖DNAを用いてDNA microarrayで検出するアッセイ法で3301人の健常者の血漿に含まれる3622のタンパク質を定量している。GWASデータとも関連をしらべていて,疾患と遺伝子変異とも合わせた膨大な研究。

Letterでは,
(3)発生学で分化の過程に大切なシュペーマンのオーガナイザー(形成体)について,これまで倫理的な理由もあってヒトにおけるその存在の証拠はみつかっていなかったのが,ES細胞を用いた研究でニワトリ胚に移植することで証明した論文(Self-organization of a human organizer by combined Wnt and Nodal signalling)。

(4)オートファージーが哺乳類でも長寿に関係するということを初めて証明した論文(Disruption of the beclin 1–BCL2 autophagy regulatory complex promotes longevity in mice)。

(5)CD8α樹状細胞の代謝と免疫におけるHippoシグナルの解析の論文(Hippo/Mst signalling couples metabolic state and immune function of CD8α+ dendritic cells)が面白そうだ。
 

●Science

(1)類人猿のゲノム比較解析(High-resolution comparative analysis of great ape genomes

(2)肺の神経内分泌細胞(Pulmonary neuroendocrine cell: PNEC)の喘息における役割についての論文(Pulmonary neuroendocrine cells amplify allergic asthma responses

(3)腸におけるコレスレロール吸収に関連するLIMA1遺伝子バリアントについての論文(A LIMA1 variant promotes low plasma LDL cholesterol and decreases intestinal cholesterol absorption)で創薬にも関連しそう

(4)植物における免疫機構の論文(Plants send small RNAs in extracellular vesicles to fungal pathogen to silence virulence genes)。Small RNAの機能は色々と報告されてきており,病原体由来のsmall RNAがホストの免疫においても重要な働きをすることがしられているが,逆に植物が自分の身を守るためにエクソームの様なsmall vesicleでsmall RNAを出すことで真菌の病原性を抑えるという発見のようだ。

(5)母親(妊婦)の血液からRNAを調べることで胎児の週齢と早産のリスクを予測できるという論文(Noninvasive blood tests for fetal development predict gestational age and preterm delivery)。

呼吸器内科的には(2)がおすすめである。PNECはILC2の極近傍に存在して,免疫反応に影響を及ぼすし,GABAなどの神経トランスミッターを介して喘息病態に関与しているという話だ。

●NEJM

Original Articlesでは,
(1)早期妊娠喪失(胎児死亡など)の内科的管理における本邦では未承認の中絶薬ミフェプリストンの試験(Mifepristone Pretreatment for the Medical Management of Early Pregnancy Loss

(2)原発性胆汁性胆管炎の試験(A Placebo-Controlled Trial of Bezafibrate in Primary Biliary Cholangitis

(3)TIAや軽症脳梗塞後の心血管イベント追跡研究(Five-Year Risk of Stroke after TIA or Minor Ischemic Stroke

(4)塞栓源不明脳梗塞発症後の試験(Rivaroxaban for Stroke Prevention after Embolic Stroke of Undetermined Source)といったところ。

Images in Clinical Medicineでは
(5)LAMの症例(Lymphangioleiomyomatosis)なので一覧を。

Clinical Implications of Basic Researchでは
(6)マイクロバイオームとSLEに関する最近のScienceの研究成果を解説(The Microbiome and Systemic Lupus Erythematosus)している。平たく言うと腸内にEnterococcus gallinarumという細菌が腸内にいると肝へのtranslocationが起こりやすく,SLEに特徴的な症状が出やすくなり,SLEになりやすいBXSBマウスではSLE発症するが,抗生剤治療をすると何と抗核抗体や自己抗体は減少して寿命も延ばしてしまうという話。

(鈴木拓児)

貫和私見として加えると,Natureに関しては、ArticleのアナログメモリーによるNeural network模倣回路の論文は技術革新かも知れない。また気で人を飛ばしてる医学者としては,表紙のエイの電気受容のKチャンネルは「気」になるので,ダウンロードします。


※500文字以内で書いてください