呼吸臨床
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「ほぼ週刊 トップジャーナル・ハック!」No. 6

公開日:2018.07.18


今週のジャーナル


Nature Vol. 559, No.7713(2018年7月12日)日本語版 英語版

Science Vol. 361, Issue #6398(2018年7月13日)日本語版 英語版

NEJM Vol. 379, No. 2(2018年7月12日)日本語版 英語版





上皮細胞間,細胞接着機構シグナル交流・遺伝子発現研究へのモデル系提示

 先週は物性物理の面では,Natureにマヨラナフェルミオンの報告,Scienceには39億光年先のブラックホールから飛来のニュートリノの同定が南極のアイスキューブ・ニュートリノ観測所(Wikipedia日本語版参照)から報告という日本人の絡む研究がメディアで流れた。


Nature

(1)細胞生物学

膜のない細胞小器官で有糸分裂時に起こる相転移はキナーゼによって制御される(Kinase-controlled phase transition of membraneless organelles in mitosis

 細胞には細胞膜があり,その中のorganellaも膜構造をもち,そうした隔離構造は各種化学反応効率上有利と考えられている。しかし細胞にはそれ以外にも膜構造はとらないが,液相/液相分離構造が存在する。今回は細胞有糸分裂時,核膜構造消失に伴う,細胞構造大変化期に,こうした液相/液相分離の制御に作用するDTRK3というkinaseが機能することが報告されている。細胞は分かっているようで,まだまだ未知が多いと思い知らされる。


(2)プリン作動性受容体P2RX7は長期生存記憶CD8+ T細胞の代謝適応性を指揮する(The purinergic receptor P2RX7 directs metabolic fitness of long-lived memory CD8+ T cells

 細胞損傷のsensingに用いられる細胞外ATP(eATP)はプリン作動性受容体P2RX7を介して自然免疫活性化等に関与する。今回は長期生存するCD8+T細胞集団において,P2RX7阻害剤が,その維持に影響すること。一方において,免疫でなく神経系では疼痛刺激の伝達が抑制されると報告された。進化的に旧いと考えられるeATPのシグナルが,こうした基本sensing機構に深く関与することに興味引かれる。


(3)その他

●共有結合性低分子阻害剤でSTINGを標的とする(Targeting STING with covalent small-molecule inhibitors

 自然免疫のシグナル伝達機構で重要なSTINGの低分子阻害剤の報告

●PARP捕捉損傷の供給源はゲノム中のリボヌクレオチドであることがCRISPRを用いたスクリーニングにより明らかになった(CRISPR screens identify genomic ribonucleotides as a source of PARP-trapping lesions

 CRISPER系を用いたPARP(polyADP ribose polymerase)阻害と関連する相同組み換え関連遺伝子群の網羅的解析。方法論として関心を持つ。


●Science

(1)自己組織化により生じる多細胞構造を人工的細胞間シグナリングを用いて形成する(Programming self-organizing multicellular structures with synthetic cell-cell signaling

 上皮細胞は細胞間接着により,Notch等のシグナルをやりとりし,細胞分化などへの遺伝子発現制御がなされる。しかしこの複雑なシグナル解析には適切なモデル系がなかった。UCSFの加藤らは,モデルとして2 layer circuit,3 layer circuit,single genotype 2 layer circuit等,細胞接着でのシグナル応答の斬新なモデルを報告している。気道上皮細胞への応用が期待される。


(2)その他

●哺乳類受精卵で形成される二重紡錘体は,初期胚において両親ゲノムを隔離する(Dual-spindle formation in zygotes keeps parental genomes apart in early mammalian embryos

●他の雑誌から:Cell. 2018; 174: 336-49 (July 12, 2018)

mTORC1が細胞内で渋滞を巻き起こす(mTORC1 jams cell traffic

 mTORC1の推進する細胞内蛋白合成でribosome関連蛋白(細胞内蛋白容量の20%)が,細胞内蛋白交通流の渋滞を引き起こすという報告。


●NEJM

(1)遺伝子組換えポリオウイルスで治療した再発膠芽腫(Recurrent Glioblastoma Treated with Recombinant Poliovirus

 再発性のglioblastomaに非病原性recombinant polio-rhinovirus (PVSRIPO)を腫瘍内に直接注入すると,腫瘍で高発現するCD155(polio virus受容体)により細胞内に入る。結果として,神経病原性副作用は認めず,24,36カ月での生存は改善した。


(2)臨床試験の異世界(A Parallel Universe of Clinical Trials

 2016年にイリノイ州で施行された単純性ヘルペスのワクチン臨床試験が批判されている。IRB,FDAなどへの申請はないまま実施され,責任医師は2017年に癌で死亡というshockingな内容。米国でなお存在するこうした事例。日本ではもうないのか? パラレル宇宙での臨床試験というタイトルもshocking。


(TN)



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