呼吸臨床
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「ほぼ週刊 トップジャーナル・ハック!」No. 7

公開日:2018.07.25


今週のジャーナル


Nature Vol. 559, No.7714(2018年7月19日)日本語版 英語版

Science Vol. 361, Issue #6399(2018年7月20日)日本語版 英語版

NEJM Vol. 379, No. 3(2018年7月19日)日本語版 英語版





下気道感染症に対する抗菌薬の使用判断におけるプロカルシトニンの役割

Nature

 Editorial には,トランプ大統領が環境保護に関して無関心であることによる科学者たちへの弊害やヨーロッパ諸国におけるポスドクの雇用状況の不透明さなどの問題が取り上げられている。アカデミアにおける研究費や雇用条件などは世界共通の問題のようだ。


(1)骨髄球系細胞から分泌されるIL-23が去勢抵抗性前立腺がんを駆動する(IL-23 secreted by myeloid cells drives castration-resistant prostate cancer

 前立腺がんでは,アンドロゲン除去療法に対して抵抗性(去勢抵抗性)を示すことがしばしば認められる。本研究では,マウスモデルおよび去勢抵抗性前立腺がん患者の腫瘍微小環境の解析によって,腫瘍に浸潤する骨髄球系の細胞が産生するIL-23とそのシグナルによるアンドロゲン受容体発現誘導が,アンドロゲン除去に対する抵抗性獲得の要因であることを明らかにした。マウスモデルではIL-23の阻害抗体が抵抗性の改善を認めており,臨床応用が期待される。


(2)健常人の末梢血細胞を用いた急性骨髄性白血病発症リスクの予測(Acute myeloid leukaemia: Prediction of acute myeloid leukaemia risk in healthy individuals

 急性骨髄性白血病AMLは加齢と共に発症率が増加する。実際加齢によって,造血幹細胞・前駆細胞に変異が蓄積し,前白血病状態としてクローナルな増殖を示すことが知られているが,それが急性白血病に至るのか,そのまま良性のクローナルな増殖に留まるのか,それを見分ける手段がなかった。本研究では,実際にAMLを発症してしまう群と良性クロナール増殖を維持する群の遺伝学的比較によって,変異の総数・バリアント対立遺伝子頻度によって差別化が可能であることを明らかにした。これからAMLを発症する可能性が高い群への早期介入が期待される。


(3)その他

●ウイルスベクターを用いないCRISPR-Cas9ゲノムターゲッティングによるヒトT細胞のリプログラミン(Reprogramming human T cell function and specificity with non-viral genome targeting

  ウイルスベクターを必要としないCRISPR–Cas9システムにより,ヒトT細胞の生存と機能を維持したまま,ゲノムの特定部位に1kb以上DNA塩基配列を挿入する新たな手法を報告している。

●心血管生物学:冠動脈を形成する初期の前駆細胞の単一細胞解析(Single-cell analysis of early progenitor cells that build coronary arteries

 発生中の心臓の静脈細胞を標的とした単一細胞RNAシークエンスにより,既存の静脈から冠動脈が形成されるまでのプロセスが明らかになった。


●Science

 IN DEPTHでは,臨床試験でこれまで集積された患者データを,他の研究者も閲覧できるようなシステムが動き出したことを報じている。(A new portal for patient data


 LETTERSには,Natureと同様,新たに研究室を立ち上げたJunior PIを支えるようなプログラムを研究所単位でもっと考えなければならないというような意見が投稿されている。アカデミアからの研究者離れを組織的に解決することが望まれている。(Preparing junior faculty for success


(1) ヒト赤血球における胎児ヘモグロビンの制御因子としてHRI(heme regulated inhibitor kinase)をCRISPRスクリーニングにより同定(Domain-focused CRISPR screen identifies HRI as a fetal hemoglobin regulator in human erythroid cells

 鎌状赤血球症やβサラセミアは成人型βグロビン遺伝子の変異により発症するが,その臨床症状は胎児型ヘモグロビンを再び発現させることにより改善することが知られている。胎児型ヘモグロビンは,出生後早期に発現が抑制されるが,そのメカニズムの詳細は不明な点が多い。本研究では,胎児型ヘモグロビン遺伝子の発現の抑制に関わる分子としてヘム制御性のeIF2α kinase(EIF2AK1) をCRISPR-Cas9システムを用いたスクリーニングで同定した。今後の治療標的として期待される。


(2) 淡明細胞型腎細胞癌ではVHL基質の転写因子ZHX2が発癌ドライバーとして働く(VHL substrate transcription factor ZHX2 as an oncogenic driver in clear cell renal cell carcinoma

 淡明細胞型腎細胞癌では,頻繁に von Hippel-Lindau (VHL) E3 ubiquitin ligase proteinの機能欠損型の変異が認められるが,発癌においてこの機能欠損がどのような経路を介して腫瘍増殖を誘導しているかについて不明な点が多い。本研究では,ヒドロキシル化された状態のときVHLに結合する蛋白のスクリーニングから転写因子Zinc fingers and homeoboxes 2 (ZHX2)を同定し,VHL機能欠損の淡明細胞型腎細胞癌では核内ZHX2が増加し,NFkBシグナルが増強されることが明らかになった。


●NEJM

(1) 軽症脳梗塞または一過性脳虚血発作後のクロピドグレルとアスピリンの併用抗血小板療法(Clopidogrel and Aspirin in Acute Ischemic Stroke and High-Risk TIA

 国際無作為化試験で,軽症脳梗塞または一過性脳虚血発作を発症した症例に対して,クロピドグレル+アスピリンの併用治療を受けた患者と,アスピリンのみの投与を受けた患者とを比較した場合,90 日の時点で主要な虚血イベントのリスクは併用群で低く(併用群5.0% vs アスピリン単剤群 6.5%),一方重大な出血のリスクは併用群で高かった(併用群0.9% vs アスピリン単剤群 0.4%)。


(2) 下気道感染症に対する抗菌薬の使用判断におけるプロカルシトニンの役割(Procalcitonin-Guided Use of Antibiotics for Lower Respiratory Tract Infection

 プロカルシトニン濃度に基づく抗菌薬の使用管理についてはこれまで多くの有用性に関する報告がなされている(Schuetz P, et al. Clin Infect Dis. 2012, Schuetz P, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2017など)。本研究では,肺炎管理における治療基準をクリアした米国の14病院で,下気道感染症が疑われる救急患者を対象に,プロカルシトニンガイド群または通常の治療群に割り付けるランダム化試験 (ProACT試験) を1,656名に対して実施した。患者の59.4%が抗菌薬投与を受け,投与開始の際にプロカルシトニンガイド群95.9%,通常ケア群2.2%で主治医はプロカルシトニンの数値を受け取った。結果として抗菌薬投与日数(プロカルシトニンガイド群4.2日 vs 通常治療群4.3日)および有害アウトカムの割合 (プロカルシトニンガイド群11.7% vs 通常治療群13.1%) に関して両群に有意差は認めなかった。

 これまでプロカルシトニン測定の有効性を示す報告は複数存在するが,これまでと反する結果が出た背景の一つとして,以前と比べ抗菌薬過剰使用に関する注意意識が定着し,通常治療群でも抗菌薬が控えられた可能性が考察されている。

(SK)


<追伸>
 総説誌であるAnnual Review社から,新創刊として,Annual Review of Biomedical Data Scienceの案内がありました。アクセスすると現在ならFree Downloadが数報できます。Visualization of Biomedical Dataや,Big Data Approaches for Modeling Response and Resistance to Cancer Drugsなどです。Big dataをどう取り扱うのか? それをどう勉強するのか?はmolecular biologyの次の学問として,世界中の求めていることだと思います。皆様にもお薦めします。

(TN)



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