" /> Circulating Extracellular Vesicles(注目のexosomeなど)は臨床にどう入るか? |
呼吸臨床
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「ほぼ週刊 トップジャーナル・ハック!」No. 13

公開日:2018.09.12


今週のジャーナル


Nature Vol. 561, No.7721(2018年9月6日)日本語版 英語版

Science Vol. 361, Issue #6406(2018年9月7日)日本語版 英語版

NEJM Vol. 379, No. 10(2018年9月6日)日本語版 英語版






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Circulating Extracellular Vesicles(注目のexosomeなど)は臨床にどう入るか?

Nature


(1)酵素学を離れた新機能


グルタミンシンテターゼの血管新生におけるグルタミン合成以外の役割(Role of glutamine synthetase in angiogenesis beyond glutamine synthesis

 グルタミンシンテターゼは,グルタミン酸とアンモニアからグルタミンを合成する酵素であるが,この論文では同遺伝子のまったく新たな機能として,血管新生の際の内皮細胞の移動に関わることを報告している。



(2)人類史


ネアンデルタール人の母親とデニソワ人の父親を持つ個体のゲノム(The genome of the offspring of a Neanderthal mother and a Denisovan father
 医学とも呼吸器とも関係ない論文だが興味深い報告。ネアンデルタール人とデニソワ人は,いずれも絶滅したヒト族集団であるが,ロシアのデニソワ洞窟で出土した骨片から,ネアンデルタール人の母親とデニソワ人の父親との間に誕生した第1世代の個体が発見されたことを報告している。



(3)自然免疫


ALPK1は細菌のADP-ヘプトースの細胞質自然免疫受容体である(Alpha-kinase 1 is a cytosolic innate immune receptor for bacterial ADP-heptose
 これまでに細菌の代謝産物であるD-グリセロ-β-D-マンノ-ヘプトース 1,7-ビスリン酸(HBP)は,宿主の細胞質ゾルにおいてNF-κBシグナル伝達を活性化できることが示されている。今回,ADP-β-D-マンノ-ヘプトース(ADP-Hep)がIII型分泌装置依存的にNF-κB活性化とサイトカインを発現させることが示された。ALPK1がパターン認識受容体であり,ADP-Hepが実効的な免疫調節因子であることが突き止められた。ADP-HepによるNF-κBの活性化には,ALPK1(alpha-kinase 1)–TIFA(TRAF-interacting protein with forkhead-associated domain)軸が関連していることが明らかになった。


(4)腫瘍学


広範囲にわたるイントロンポリアデニル化は白血病で腫瘍抑制遺伝子を不活性化する(Widespread intronic polyadenylation inactivates tumour suppressor genes in leukaemia
 原発性CLL細胞では,短縮型のmRNAや蛋白質が広く増加しており,これらは遺伝的変化によってではなく,イントロンのポリアデニル化によって生じていることがわかった。DNAレベルでは表れてこないmRNAレベルの事象が,腫瘍抑制遺伝子の不活性化を介して癌の発症に広く関わっていることを明らかにしている点で重要である。



●Science


(1)腫瘍学

未治療転移性腫瘍では,ドライバー遺伝子の不均一性はほとんどない(Minimal functional driver gene heterogeneity among untreated metastases
 現在は遺伝子変異の検索が癌治療の重要な検査になってきている。しかしながら癌組織は不均一なので,原発巣と転移巣におけるドライバー遺伝子の変異の違いについて明らかにすることは非常に重要である。今回,20人の未治療のさまざまな癌患者から76の転移組織を採取し,解析したところ,未治療の同一の患者内においては大部分の転移癌組織ではドライバー遺伝子変異は同一であることが明らかとなった。


●NEJM


(1)インフルエンザ


成人・思春期児の合併症のないインフルエンザに対するバロキサビル マルボキシル(Baloxavir marboxil for uncomplicated influenza in adults and adolescents
 バロキサビル マルボキシルは,インフルエンザウイルスのキャップ依存性エンドヌクレアーゼ選択的阻害薬である。合併症のないインフルエンザ患者において,バロキサビルの単回投与は,明らかな安全性への懸念を伴わず,症状の緩和についてはプラセボに対して優越性を示した(罹病期間が約1日間短縮,オセルタミビル群とは同程度)。試験レジメン開始後 1 日の時点でのウイルス量低下については,オセルタミビルとプラセボの両方に対して優越性を示した。治療後にバロキサビルに対する感受性の低下をもたらす変異の出現が観察された(第2相試験で2.2%,第3層試験では9.7%)。


(2)循環器


CT 冠動脈造影と心筋梗塞の 5 年リスク (The SCOT-HEART investigators
 安定胸痛を有する患者に対する標準治療に CT 冠動脈造影(CTA)を追加した場合,標準治療のみを行った場合と比較して,5 年の時点での冠動脈疾患による死亡や非致死的心筋梗塞の発生率が有意に低下し,冠動脈造影や冠血行再建の施行率に有意な上昇はみられなかった。


(3)REVIEW ARTICLE


医学の新領域:ヒト疾患における血中の細胞外小胞(Circulating extracellular vesicles in human disease
 細胞外に分泌されるectosomes, microparticles, microvesicles, exosomes, oncosomesなどは細胞外小胞(Extracellular vesicle)と呼ばれており,RNAや蛋白や代謝産物が含まれている。先日もNature誌にexosomeのPD-L1が報告されていた。本総説では癌,心血管疾患,神経疾患,感染症などにおける役割についてわかりやすくレビューされている。


(鈴木拓児)


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