" />
最適化されたアリロマイシン類はグラム陰性細菌に対する新しいクラスの抗生物質である(Optimized arylomycins are a new class of Gram-negative antibiotics) |
(2)腫瘍学/膵癌におけるphylogenetic tree
前癌状態の腫瘍細胞は膵管内を移動しながら進化を遂げる(Precancerous neoplastic cells can move through the pancreatic ductal system) |
前癌状態から,臨床的癌への進展はいかなる経路か興味をひく。Sloan-Ketteringのグループは100例以上の手術検体(2009年1月~2011年12月)からPDCA(pancreatic ductal adenocarcinoma)とPanIN(pancreatic intraepithelial neoplasia)のそろった8検体を用いWES(whole exome sequencing)で解析した。
その結果,driver変異獲得による悪性化とともに,passenger変異を用いてPanINからMRCA(most recent common ancestor)への時間経過の算出がなされている。
一方,extended dataの中には,TCGAで報告されたmutational signatureを用い,同一個人におけるPanIN間でのsignatureの相違も示されている。ほとんどの同一個体検体では類似のsignatureを維持した推移が捉えられている。
肺癌においても前癌状態は病理組織学的に同定され,またfield cancerizationという考え方もある。肺癌では同一切除検体中にPanIN的変化はほとんど見られないのだろうか?
(3)その他
RANKL逆シグナル伝達による骨吸収と骨形成のカップリング(Coupling of bone resorption and formation by RANKL reverse signalling) |
東京大学のグループがRANK,RANKLに関して,bone formationとbone resorptionに関して,新たな経路の報告をしている。
ParkinとPINK1はSTING誘導性の炎症を軽減する(Parkin and PINK1 mitigate STING-induced inflammation) |
PINK1とParkinは最近,損傷mitochondriaの除去(mitophagy)に関わることが示されている。これらが不全を引き起こした時,STINGを経由して炎症が惹起されることがKOマウスで示された。
道具を用いた検知によって体性感覚処理が体外に広がる(Sensing with tools extends somatosensory processing beyond the body) |
筆者の個人的関心である論文。道具を用いての知覚も,体性感覚として統合認識されているという報告がフランスから。
(1)腫瘍学
新たな抗癌細胞が臨床試験に入る(New cancer-fighting cells enter trials) |
癌治療としてのICI(immune checkpoint inhibitor)は,ここ5年新たな世界を切り開いてきた。それに加えてCAR-T療法(chimeric antigen receptor T細胞)はそれをさらに進め,抗腫瘍の主体としての細胞を前面に出した。化学療法時代から見れば夢のまた夢であるが,どうも研究があらたな方向に向かいだしている可能性がある。
そう感じるのも,筆者の知人の癌がほぼ9ヶ月消失しているという実例を目の当たりにしているからである。実際にはマクロファージ・ワクチンにNivolumabを併用している。さらに「実験医学」の9月号にNature Medicineの乳癌女性の症例報告が紹介されている(Nature Medicine, 24, JUNE 2018, 724–730)。これはTILとICI(Pembrolizumab)を併用して,22ヶ月癌が消失している。
この欄で紹介しているのは,CAR-NK療法が2016年から臨床試験が始まっていること,CAR-macrophage療法が2019年に臨床試験が予定されているという内容だ。この動きは5年後とんでもない展開になるのでないか?KeywordはICI+Cell therapyである。考えてみればそれは本道かも知れない。
(2)臨床血液化学検査
半合成のセンサータンパク質によってポイントオブケア診断のための代謝アッセイが可能になった(Semisynthetic sensor proteins enable metabolic assays at the point of care) |
現在の血液生化学検査は,機器の改良,試薬類の改良を経て,一見完成された状況にある。しかしそれは設備のある病院や検査会社の話である。例えば野外の一線現場(at the point of care)では即座に測定できる状況でない。
ドイツ,ハイデルベルグのMax Plank研究所が,FRETと同類のBRET(bio- luminescence resonance energy transfer)現象を用いて,血中の代謝産物の定量性のいい測定法を報告している。濾紙上で,末梢血そのものをごく少量を用い,合成蛋白とルシフェラーゼの複合体にligand + NADPH系による近傍効果でルシフェリンの光が,Cy3などの蛍光発色をさせ,定量性よく簡便に測定が可能であることを示している。
もともとは2014年に血中薬物濃度測定用に開発したものを,今回は血中代謝産物等の測定に改善したものであり,新たな臨床展開があるかもしない。
トランスサイレチン型心アミロイドーシス患者に対するタファミジス投与(Tafamidis treatment for patients with transthyretin amyloid cardiomyopathy) |
家族性アミロイドーシスの一つにtransthyretin由来のアミロイド線維が心筋に沈着することで惹起されるものがある。Tafamidisは,このtransthyretin四量体の解離を促し,アミロイド形成を抑制する。報告の第Ⅲ相試験では,全死亡率の低下が証明された。また心血管関連入院やQOLの低下も抑制された。
2018年7月5日号のNEJMには,Sanofiらが行った臨床試験で,transthyretin RNAi製剤(3週間に一度静注投与)で肝臓でのtransthyretin産生抑制を示し,血中の四量体量が80%抑制された成績が示され,本年8月にFDAが承認した。今後の核酸製剤の一つとして注目されている。Tafamidisのような経口剤がいいのか,遺伝性には核酸製剤がいいのか?21世紀治療の行方として注目される。
(2)骨髄異形成症候群MDS
骨髄異形成症候群に対する移植後の変異クリアランス(Mutation clearance after transplantation for myelodysplastic syndrome) |
MDSでは骨髄破壊的前処置後に,同種幹細胞移植がなされる。しかしその後の予後は何が規定するのか? 骨髄検体と皮膚検体を用いて拡張exome解析が移植前後でなされ,報告されている。
その結果,移植前には90例中86例(96%)に確定変異が存在したが,移植30日後では32例(37%)に減じていた。検出された変異はspliceosome,tumor suppression,DNA methylation,activated signaling,myeloid transcription factor,chromatin modifiers等に分け,その予後の良否が示されている。
こうした骨髄移植治療前後の実際の変異確認は,まさしく21世紀のprecision medicineであり,一つの方向性と考える。
(3)REVIEW ARTICLE
アスピリン喘息(Aspirin-exacerbated respiratory disease) |