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本庶佑先生のNobel賞受賞,本当におめでとうございます。
2004年,指導者であった西塚泰美教授の追悼をNatureに寄稿されたとき,栄光の時を待たず逝去された事を悲しんでいらしたが,京都大学医化学教室の錚錚たる人脈の中で遂にNobel賞受賞者が生まれた。しかも明確に癌治療の分岐点としての研究である。京都大学医化学に在籍したものとして,誇らしい,嬉しい受賞です。
記者会見でNature,Scienceは信じないと発言されていたが,それはTop researcherの立場だ。Physician scientistとしては臨床を考える上で示唆に富むことが多い(ことに2000年以降)。
体細胞変異から推定されたヒトの正常血液の細胞集団動態(Population dynamics of normal human blood inferred from somatic mutations) |
核膜の組み立て異常が有糸分裂時のエラーと染色体粉砕を結び付ける(Nuclear envelope assembly defects link mitotic errors to chromothripsis) |
2種類の抗HIV-1抗体による併用療法でウイルス抑制が維持される(Combination therapy with anti-HIV-1 antibodies maintains viral suppression) |
今週のSpecial issueはGenes in Developmentである。Reviewに4報が並んでいる。染色体情報の時間空間的発現である形態形成として,基礎生物学的には最も興味ある内容だ。
(1)腫瘍生物学
マウスでは,炎症組織で形成される好中球細胞外トラップが休眠中の癌細胞を起こしてしまう(Neutrophil extracellular traps produced during inflammation awaken dormant cancer cells in mice) |
転移性肺癌は多くの癌腫で見られる。転移着床後,非増殖状態のdormancyで長く存在し,突然増殖を開始すると考えられる。その原因は何か? ここでは喫煙や,鼻腔内にLPSを投与し,白血球が細菌を絡め取るとして注目されるNETs(neutrophil extracellular traps; 自身のDNAで構成,蛋白分解酵素MMP9など含む)が腫瘍細胞lamininを切断し,そのため細胞内シグナルが増殖に向かうという。逆に改変lamininのblocking Abでこうした現象が抑えられる。転移腫瘍細胞の活性化に好中球の炎症反応が関与するという新たな仮説である。
(2)単細胞染色体・遺伝子発現同時解析
数千個の単一細胞におけるクロマチン接近可能性と遺伝子発現の複合プロファイリング(Joint profiling of chromatin accessibility and gene expression in thousands of single cells) |
このTJHackでは,度々注目してきたが,ここ数年検体ごとの標識技術barcodingを基に,single cellにおける発現解析が多数なされている。この報告では,遺伝子発現のみならず,染色体への近接性塩基配列解析(ATAC seq:Assay for transposase-Accessible Chromatin using sequence)などで統合的に一括してデータを入手する(Fig. 1参照),sci-CAR(single cell combinatorial indexing chromatin accessibility and mRNA)法が紹介されている。実際にはdexamethasone使用後の時系列的遺伝子発現変化,またマウス腎細胞における解析が示されている。ここ数年の技術革新に,創意工夫でさらに強力な方法論の展開に,いったいどこまでついて行けるかな? と思う。
今週号はメール配信版では,肺癌,結核等の呼吸器関連が多いが,実際の目次には見当たらない。今回はその中から,結核予防ワクチンを取り上げる。
結核予防へのM72/AS01EワクチンのPhase2b比較臨床試験(Phase 2b controlled trial of M72/AS01E vaccine to prevent tuberculosis) |
医学生のためのメンタルヘルスサービス ― 行動を起こすとき(Mental health services for medical students — Time to act) |