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ナルコレプシー患者のT細胞はヒポクレチンニューロンの自己抗原を標的とする(T cells in patients with narcolepsy target self-antigens of hypocretin neurons) |
ナルコレプシーは,ヒポクレチンを産生するニューロンの欠失によって引き起こされる慢性的な睡眠障害であるが,自己免疫性の病因をもつ可能性の証拠を強める論文である。こうした稀少疾患や原因不明の不思議な病気の原因に自己免疫が関わっていることが明らかになり,病態の理解が進むと,近い将来に治療法の開発が期待できるであろう。呼吸器疾患では肺胞蛋白症がその良い例である。今回の研究では,調べた19人の患者全てにおいてヒポクレチン特異的CD4+ T細胞を検出し,13人の患者のうち8人においてヒポクレチンニューロンの別の自己抗原であるTRIB2(tribbles homologue 2)に特異的なT細胞を見いだした。自己反応性CD4+ T細胞はポリクローナルであり,複数のエピトープを標的とし,主にHLA-DRによって拘束され,インフルエンザワクチン接種時の発症増加するといわれているが,インフルエンザ抗原とは交差反応しなかった。
ネクロトーシス微小環境は肝臓癌の細胞系譜拘束を方向付ける(Necroptosis microenvironment directs lineage commitment in liver cancer) |
β1インテグリンによるメカノセンシングは肝臓の成長と生存のためのアンジオクラインシグナルを誘導する(Mechanosensing by β1 integrin induces angiocrine signals for liver growth and survival) |
膜内骨形成を仲介する骨膜幹細胞の発見(Discovery of a periosteal stem cell mediating intramembranous bone formation) |
(1)遺伝子編集治療
デュシェンヌ型筋ジストロフィーの犬モデルにて遺伝子編集によりジストロフィン発現量が増加(Gene editing restores dystrophin expression in a canine model of Duchenne muscular dystrophy) |
デユシャンヌ型筋ジストロフィーはX染色体短腕のジストロフィン遺伝子変異によって生じる伴性劣性遺伝の疾患で,男性のみに発病し,進行性筋ジストロフィーの大部分を占める。CRISPR-Cas9の遺伝子編集(gene editing)技術で遺伝子変異を修復することによって治療できることがマウスのモデルでは示されてきた。今回の論文では,より大型動物モデルであるイヌの筋ジストロフィーにおいて,アデノ随伴ウイルスベクター(AAV9)を用いた遺伝子編集による治療が有効である可能性が示された。
(2)肺癌
リプログラミングにより健常ヒト上皮組織が,決して珍しくはない致死的な神経内分泌悪性腫瘍へ変化する(Reprogramming normal human epithelial tissues to a common, lethal neuroendocrine cancer lineage) |
肺癌であれば小細胞癌として知られる神経内分泌系癌は色々な臓器にみられるが,果たして同じようなメカニズムによって発症するのかは不明であった。本論文では5つのドライバー遺伝子としてdominant negative p53(TP53DN)(P),myrAKT1(A),RB1–short hairpin RNA(shRNA)(R),c-Myc(C),BCL2(B)といった「PARCB」の分子の組合せを用いた研究で,異なる臓器である肺と前立腺で共通のメカニズムで各々発癌(小細胞肺癌と前立腺小細胞癌)を生じることを示している。
(1)肥満
幼少期のBMI増加率と肥満リスク(BMI acceleration in early childhood and obesity risk) |
小児の出生時から思春期までのBMIの動態に関する研究で,持続性の肥満を発症しやすい年齢と,肥満の発症年齢を評価した.体重のもっとも急激な増加は2~6歳のあいだに生じ,その年齢での肥満は思春期の肥満を予測する。
(2)乾癬
乾癬に対する経口TYK2阻害薬の試験(Trial of an oral TYK2 inhibitor in psoriasis) |
プラセボと選択的チロシンキナーゼ2阻害薬の5通りの投与量を比較した第2相無作為化試験で,高用量の4群は,プラセボよりも乾癬病変を消失させる割合が大きかった.実薬投与を受けている1例に,悪性黒色腫が発生した。
(3)FRONTIERS IN MEDICINE
臨床における次世代シーケンシング ― 未開の最前線(Clinical next-generation sequencing ― A wild frontier) |
次世代シーケンシングによる検査の方法や長所や限界について解説されているレビュー。今後ますます臨床の領域での活躍が予想されるので御一読を。
(鈴木拓児)