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(1)発生学
一細胞シークエンスによって明らかになった妊娠初期の母体と胎児の境界部分の細胞群(Single-cell reconstruction of the early maternal–fetal interface in humans) |
抗体とTLR7アゴニストの併用はサルにおいてサル–ヒト免疫不全ウイルスのリバウンドを遅らせる(Antibody and TLR7 agonist delay viral rebound in SHIV-infected monkeys) |
マウスの全身透明化技術が様々な研究応用へ期待される(‘Invisible’ mice reveal anatomical secrets) |
(1)食事と健康のサイエンス最前線(Reviews)
・食事由来の脂肪が見直されている(Dietary fat: From foe to friend?) ・絶食の時間(A time to fast) ・食事と健康をつなぐ腸内細菌叢の役割(The gut microbiota at the intersection of diet and human health) ・より優れたアスリートを育てるレシピ(Swifter, higher, stronger: What’s on the menu?) |
食と健康という非常に身近なテーマについて最近のサイエンスの進歩を4つの観点からレビューしている。「悪玉とは限らない脂肪の有用な側面」,「健康的な食事摂取の回数・摂取量」,「腸内細菌叢の役割」,「優秀なアスリートを育てる食事」などが最新の論文データとともに総説として記載されている。特に4つ目は興味深い。慢性不全・呼吸リハビリを考える呼吸器内科医にとっても重要なヒントになるかもしれない。
(2) 抗炎症とOGG1
OGG1(8-oxoguanine DNA glycosylase 1)の低分子阻害剤は炎症促進性の遺伝群の発現と炎症を抑制する(Small-molecule inhibitor of OGG1 suppresses proinflammatory gene expression and inflammation) |
炎症が生じた部位に遊走する自然免疫細胞の代表がマクロファージや好中球であり,そのような細胞は活性化によりエフェクターの一つとして活性酸素種・活性窒素種(RONS: reactive oxygen and nitrogen species)を放出することで,外来の微生物の侵入などを防いでいる。その一方で,過剰なRONSの産生はDNAに酸化ストレスによる傷害を与える。
この研究では,この様な酸化ダメージは,NFkBのプロモーター結合領域に近接したグアニン(G)が豊富な領域に生じやすく,一度グアニンの酸化ダメージが生じると,そこにはDNA修復酵素であるOGG1が結合しやすくなり,OGG1がさらに炎症促進性の転写因子をリクルートしてくる。このようなメカニズムによって炎症が増幅することが分かった(Perspectiveに図解あり)。さらに著者らは,このOGG1のDNAダメージ部位への結合を阻害する低分子化合物を作成し,それを投与することで,LPSやTNFaによる肺の急性炎症を安全に抑制することをマウスモデルによって証明した。アウトカムとして最終段階で放出されるサイトカインを抑制するのではなく,その上流で炎症にアクセルをかける因子を低分子で阻害するという新たな治療法として注目される。
(1)感染症:HIVとIRIS
結核関連の免疫再構築症候群に対するステロイド治療の有効性と安全性(Prednisone for the prevention of paradoxical tuberculosis-associated IRIS) |
HIV感染症では,先述の抗ウイルス治療(anti-retroviral therapy: ART)を開始することで,血中のCD4T細胞数が上昇し免疫機能が回復する。この際,臨床症状が一過性に増悪する例が観察され,免疫再構築症候群(Immune Reconstitution Inflammatory Syndrome: IRIS)と呼ばれる。IRISは,すでに体内に感染している病原に対し,回復(再構築)された免疫機能が再度反応することで,炎症が増悪することによるものと考えられ,特に治療開始前にCD4数が低値の症例で起こりやすく,結核,非定型抗酸菌症,ニューモシスチス肺炎,サイトメガロウイルス感染症,クリプトコッカス症などのその病態が報告されている。
この臨床試験は,結核関連のIRISのリスクが高い患者に対するプレドニゾン(prednisone)の予防投与について,その有効性・安全性を評価したもの。ART開始前の30日以内に結核治療を開始し,CD4数が100/μL以下の患者が対象。プレドニゾン投与群(40mg/日を14日間,その後20mg/日を14日間)またはプラセボ投与群で,ART開始後12週以内の結核関連IRISの発症を評価する試験。4週間行うプレドニゾン予防投与は,プラセボと比較して結核関連IRISの発症率を低下させ,合併症としての重症感染症や癌のリスクは上昇させなかった。
(2)今週の画像
EGFR変異陽性肺癌のびまん性の肺転移(Miliary metastases in non–small-cell lung cancer) |
(小山正平)