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呼吸臨床
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「ほぼ週刊 トップジャーナル・ハック!」No. 39

公開日:2019.3.20


今週のジャーナル


Nature Vol. 567, No.7747(2019年3月14日)日本語版 英語版

Science Vol. 363, Issue #6432(2019年3月15日)日本語版 英語版

NEJM Vol. 380, No.11(2019年3月14日)日本語版 英語版






Archive

肺には肺胞マクロファージ以外にも2つのマクロファージが。線維化抑制に重要?

•Nature

(1)幹細胞生物学 

クローナリティーの本質的な変化から明らかになった骨末端の成長板における幹細胞ニッチ(A radical switch in clonality reveals a stem cell niche in the epiphyseal growth plate

 小児期の長管骨における軟骨内骨化は,骨端に存在する成長板での持続的な軟骨細胞の供給によって成り立っているが,成長期の間どのように維持されているのか,その詳細なメカニズムは不明であった。今回著者らは,複数の蛍光レポーターを用いて,各種細胞群をトレースする技術を用いることで,軟骨形成前駆細胞が,胚発生と出生後の段階で異なる挙動を示すことを示している。胎仔期および新生仔期の軟骨形成前駆細胞は,長管骨の長軸方向への成長に伴い確実に減少するが,その後,これらの前駆細胞は骨端成長板で幹細胞ニッチ(幹細胞マーカーの発現と自己複製の能力の獲得を伴う)を形成し,近傍の細胞からのシグナル伝達によって長管骨の成長に必要な軟骨細胞を持続的に供給することを明らかにした。詳細には,mammalian target of rapamycin complex 1 (mTORC1)のシグナルが,成長板のresting-zoneにある幹細胞の自己複製維持に関わり,同じくresting-zoneで分泌される

 Parathyroid hormone-related protein(PTHrP),増殖を開始し肥大してきた軟骨細胞(early-differentiated hypertrophic chondrocytes)から分泌されるIndian hedgehog(Ihh)によって増殖と分化が制御されていることが分かった。News and Viewsに分かりやすい図解がある。

生後小児期に長管骨の成長がどのように維持されているのかを理解することは,骨折などによる損傷後の骨再生を考慮するうえで重要な要素になると考えられる。


(2)微生物学 

ハマダラカ類に対する抗マラリア薬曝露がマラリア原虫の伝播を阻害する(Exposing Anopheles mosquitoes to antimalarials blocks lasmodium parasite transmission

 マラリアの拡散を防ぐ最も有効な手段として,殺虫剤で処理した蚊帳が使用されている。しかしながら,近年殺虫剤への抵抗性を獲得した蚊の出現が複数報告され,マラリア拡散リスクと懸念されている。本論文では,ハマダラカ属(Anopheles)の蚊の雌を,蚊そのものに対する殺虫剤ではなく,マラリア原虫の阻害薬で処理した蚊帳にさらすことで,マラリア媒介蚊におけるマラリア原虫(Plasmodium)の感染が効果的に阻止できることを示している。低濃度の抗マラリア薬であるatovaquone(シトクロムb阻害薬)への短時間の曝露によって,ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)の中腸(midgut)内での熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の発生が完全に阻止され,その伝播も阻止された。一方で,蚊の生存や生殖への影響は認めなかった。同様の効果は他の種類のシトクロムb阻害薬でも認められた。以上から,マラリア原虫のミトコンドリア機能阻害がこれらの原虫を死滅させるのに適した標的であるとわかった。News and Viewsにも図解がある。

 マラリアの蔓延を防ぐ手段として,蚊そのものを標的とする薬剤と蚊に寄生した原虫を標的とする薬剤を併用することで,殺虫剤抵抗性という問題をクリアできる可能性が示唆されている。既存薬を工夫して使用することで,蔓延を抑制できる可能性があることから,非常に効率的なアイデアとして期待される。


(3)腫瘍学 

肝細胞は肝転移促進性のニッチ形成を指示する(Hepatocytes direct the formation of a pro-metastatic niche in the liver

 膵臓癌は予後不良で,米国における治療成績でも5年生存率は8%とされている。周囲組織への直接浸潤や肝臓転移の制御は治療における重要な課題となっている。著者らは今回,膵臓癌のマウスモデルを用いて,膵臓癌細胞が自ら転移できる肝臓ニッチの形成をどのように誘導するかを明らかにしている。膵臓癌を持つマウスでは,膵臓癌細胞の近隣にある非腫瘍細胞が分泌するインターロイキン6によって,肝細胞のsignal transducer and activator of transcription 3(STAT3)シグナルが活性化され,serum amyloid A1 /A2の産生が促進される。その結果,線維芽細胞や抑制性の骨髄球系細胞の蓄積が起こり,肝転移の形成を助けるというメカニズムを示している。さらに,これら一連のシグナルを阻害することで,肝転移が減少することを証明した。News and Viewsにわかりやすい図解がある。

 Metastatic nicheのメカニズムに関しては,さまざまな報告があるが,比較的単純なメカニズムで肝転移に対処できる可能性が示されている。肺癌治療において併用療法にVEGF阻害を加えるメニューでは肝転移抑制に有効性が示されている。その背景にはこのようなメカニズムが関与しているかもしれない。



•Science

(1)免疫学 

2つの異なる間質内マクロファージがさまざまな組織の特異的な組織下環境で共存する(Two distinct interstitial macrophage populations coexist across tissues in specific subtissular niches

 組織常在型マクロファージ(resident tissue macrophages: RTMs)は,ヘテロな集団としてさまざまな組織でニッチを形成し,組織特異的な微小環境の影響によって特異的な表現形や機能を示すことが知られている。例えば,脳・肺・肝臓といった組織では,胎芽由来のRTMsが自己増幅を繰り返すのに対して,腸・皮膚・膵臓などの組織では,骨髄由来の単球細胞によって置換される。単球が常在する臓器にたどり着くと,組織特異的なニッチによって分化誘導され,その組織特有のRTMsに変化することが報告されている。肺においては,胎生期由来の肺胞マクロファージが肺胞腔内に存在するだけでなく,間質にも間質内マクロファージが存在することが知られているが,間質内マクロファージの多様性などについてはこれまで詳細は明らかになっていなかった。今回著者らは,single-cell mRNA sequencingの技術を用いて,この間質内マクロファージが2種類の細胞〔Lyve1loMHCIIhiCX3CR1hi(Lyve1loMHCIIhi)とLyve1hiMHCIIloCX3CR1lo(Lyve1hiMHCIIlo)〕から構成されることを明らかにするとともに,同様の2種類のRTMsが肺に限らず,心臓・脂肪・皮膚などにも認められることを明らかにした。さらに,この2種類のRTMsは,Ly6Chiの単球によって徐々に置換されること,局在が異なりLyve1loMHCIIhiが神経束に,Lyve1hiMHCIIloが血管壁に近接してそれぞれ存在することを見出した。PERSPECTIVEおよびABSTRACTにわかりやすい図解がある(PerspectiveAbstract)。

 最後に彼らは,線維症モデルを用いた解析において,Lyve1hiMHCIIloの除去により,線維化が増悪することを示している。以上から2種類の単球由来のRTMsのうち,Lyve1hiMHCIIlo は血管近傍において組織炎症制御に重要な役割を果たしていることが明らかになった。

 何らかの炎症状態で1型もしくは2型へ変動する性質とは別に,定常状態でも元々機能が異なるRTMsが存在することを示すもので,アレルギー炎症性疾患・悪性腫瘍などの治療の前提として非常に重要な概念と考えられる。



(2)その他:Reviews 

小児癌に関するreviewが3報

小児癌のゲノムランドスケープ:診断および治療に関する意味合い(The genomic landscape of pediatric cancers: Implications for diagnosis and treatment

小児癌に対する次世代型の個別化臨床試験の推進(Ushering in the next generation of precision trials for pediatric cancer

癌に罹患したすべての子供達に対する科学と健康(Science and health for all children with cancer

 Editorialで述べられているが,稀少な小児癌に関して全世界レベルでゲノムデータを含む情報を集積・共有し,治療開発の取り組みを迅速に進めていくべきという提唱がされている。



•NEJM

(1)結核 


HIV関連結核の予防としての1カ月間のリファペンチン・イソニアジド併用療法(One month of rifapentine plus isoniazid to prevent HIV-related tuberculosis

 HIV関連結核の少ない日本では少し関連がうすいが,強力な免疫抑制薬や生物製剤などを使用する際には参考になる知見かもしれない。

 結核はヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者における死因として問題であるが,予防治療が有効であるにも関わらず,現行のレジメンでは実施状況が不良で完了率が低いという問題があった。本試験(無作為化非盲検第3相非劣性試験)では結核の有病率が高い地域に居住しているか,潜在性結核感染の証拠(ツベルクリン反応陽性)を有するHIV感染患者を対象に,リファペンチン(rifapentine)とイソニアジドを毎日併用する1カ月レジメン(1カ月群)とイソニアジドのみの9カ月継続するレジメン(9カ月群)とで有効性と安全性を比較した。3,000例を登録し,中央値で3.3年間追跡した。発生率および重篤な有害事象に有意差は認めなかった。治療を完了した患者の割合は,1カ月群のほうが9カ月群よりも有意に高かった(p<0.001)。以上から,HIV感染患者の結核予防において,併用1カ月レジメンは,単剤9カ月レジメンに対して非劣性を示すとともに,治療完了率は1カ月群のほうが有意に高かった。


(2)Review article 

民間宇宙飛行時代の宇宙医学(Space medicine in the era of civilian spaceflight

 近い将来,民間での宇宙旅行が可能になる時代に突入するにあたり,これまで事前にトレーニング受けていた宇宙飛行士とは異なり,一般人が短期間でも宇宙旅行によって健康障害がもたらされる可能性があり,宇宙医学の重要性が増している。長期滞在で注目されている重力や放射線の影響に留まらず,短期的な場合でも身体への影響などがあることがreviewされている(Table1Fig)。

 ここにもNEJMのおもしろさが垣間見られる。


(小山正平)