" /> 体内の細菌叢と様々な疾患(ヒトマイクロバイオームプロジェクト第2段階)/中国北東部で新たなウイルスによる感染症が発症 |
呼吸臨床
VIEW
---
  PRINT
OUT

「ほぼ週刊 トップジャーナル・ハック!」No. 49

公開日:2019.6.5


今週のジャーナル


Nature Vol. 569, No.7758(2019年5月30日)日本語版 英語版

Science Vol. 364, Issue #6443(2019年5月31日)日本語版 英語版

NEJM Vol. 380, No.22(2019年5月30日)日本語版 英語版






Archive

体内の細菌叢と様々な疾患(ヒトマイクロバイオームプロジェクト第2段階)/中国北東部で新たなウイルスによる感染症が発症

•Nature


 米国NIHで2007年から始まったヒトマイクロバイオームプロジェクト(Human Microbiome Project:HMP)は,現在は統合ヒトマイクロバイオームプロジェクト〔the integrative HMP(iHMP)〕として第2段階が進んでいる。iHMOについてはこちらの論文もわかりやすい。その中でHMPの2段階のコンセプトはで示されている。


 本内容についてはEditorialNews&ViewsPerspectiveでとりあげられており,本号では炎症性腸疾患と糖尿病についての2つの論文が掲載されている。



(1)微生物学 


炎症性腸疾患における腸内微生物生態系のマルチオミクス(Multi-omics of the gut microbial ecosystem in inflammatory bowel diseases

 ボストンのブロード研究所からの仕事で,クローン病患者,潰瘍性大腸炎患者,対照群の計132名を1年間追跡し,疾患罹患中の宿主と微生物の活動についての経時的な統合分子プロファイルを作成した(1人につき最高24時点;糞便,生検,血液で計2,965の試料を採集)。本論文により,絶対嫌気性細菌の減少を伴う通性嫌気性細菌の特徴的な増加の他,微生物の転写(例えばクロストリジウム類で),代謝物のプール(アシルカルニチン,胆汁酸,短鎖脂肪酸),そして宿主血清中の抗体レベルが分子的に撹乱されていることが明らかになった。疾患活動期はまた,時間変動の増大を特徴とし,分類学的,機能的,生化学的な変化を伴っていた。さらに,統合的な解析からは,この調節異常の中核にある微生物的要因,生化学的要因,宿主的要因が明らかになった(図4)。

 本研究の基盤の情報資源,結果,データは,「炎症性腸疾患マルチオミクスデータベース(https://ibdmdb.org)」から利用可能である。


前糖尿病における宿主–微生物ダイナミクスの長期的マルチオミクス(Longitudinal multi-omics of host–microbe dynamics in prediabetes

 スタンフォード大学を中心としたグループからは,糖尿病の初期段階についてのマイクロバイオーム研究である(図1)。本論文では健康な人と前糖尿病患者の計106人を対象に約4年間にわたって試料を採集し,トランスクリプトーム,メタボローム,サイトカイン,プロテオーム,そしてマイクロバイオームの変化について,詳細なプロファイリングを行った。その結果,第1に,健康なプロファイルは個体間で異なる一方,個体内や個体間での違いは多様なパターンを示した(図2)。第2に,呼吸器のウイルス感染や免疫感作において宿主と微生物に広範な変化が生じ,免疫感作では防御となり得る応答が引き起こされることが明らかになった。この応答は,呼吸器ウイルス感染に対する応答とは異なる。また,呼吸器ウイルス感染の際には,インスリン抵抗性の被験者はインスリン感受性の被験者とは異なる応答を示した。第3に,数千に及ぶプロファイリングされた分子における全体的な共関連解析からは,インスリン抵抗性の被験者とインスリン感受性の被験者との間で異なる宿主–微生物相互作用が複数明らかになった。さらに,ある1人の被験者では,Ⅱ型糖尿病の発症に先立つ個体特異的な一連の初期分子シグネチャーが特定された(図6)。これらの分子シグネチャーには,炎症マーカーであるインターロイキン1受容体アゴニスト(IL-1RA)や高感度C反応性蛋白質(CRP)が含まれ,これらは生体異物によって誘導される免疫シグナル伝達と共に見られた。


(2)癌 


中枢神経系由来の前駆細胞が,癌で神経発生を駆動する(Progenitors from the central nervous system drive neurogenesis in cancer

 フランス・パリののフランシス ジャコブ生物学研究所からの論文で,News&Viewsでもとりあげられている。前立腺癌は神経細胞を含んでいて,この細胞は疾患の進行に関連するが,それがどこから来ているかはわかっていなかった。本論文ではこの神経細胞は中枢神経系に由来し,ダブルコルチン(doublecortin:microtubule-associated proteinで神経前駆細胞や未熟細胞に発現するが成熟神経細胞で消失する分子)を発現する(DCX+)神経前駆細胞が,前立腺腫瘍と転移性腫瘍に浸潤し,そこで神経発生を開始することを明らかにした。前立腺癌のマウスモデルでは,脳室下帯subventricular zone(SVZ)(中枢神経系の神経発生領域)におけるDCX+神経前駆細胞の細胞数の変動が,血液脳関門の崩壊やDCX+細胞の循環血中への脱出と関連していた。その後,これらの細胞は腫瘍に浸潤して定着し,新たなアドレナリン作動性ニューロンを生み出すことができた。さらに前立腺癌マウスモデルで遺伝的にDCX+細胞を選択的に除去すると腫瘍発生の初期段階が抑制される一方,DCX+神経前駆細胞を移植すると,腫瘍の増殖と転移が促進された。ヒトでは,DCX+神経前駆細胞の密度が,前立腺癌の悪性度と再発に強く関連している。これらの結果から,中枢神経系と前立腺腫瘍の間の独特なクロストークが明らかになり,癌治療で神経が標的となり得ることが示唆される。


•Science

(1)遺伝病 

遺伝的修飾因子の関わるヒト心臓病のoligogenicな遺伝(Oligogenic inheritance of a human heart disease involving a genetic modifier

 サンフランシスコのグラッドストン研究所とカルフォルニア大学サンフランシスコ校からの研究。小児発症の心筋症3人の兄弟と健常なその両親からエクソームシークエンスをしたところ,まれなヘテロな遺伝子バリアントがいくつもあったが,その中から心臓の発生や機能に関係のあるMKL2,MYH7とNKX2-5のミスセンス変異となるsingle-nucleotide variant(SNV)が絞り込まれた。前者2つの遺伝子は正常な父親から,後者の遺伝子は正常な母親からの遺伝で,3つの遺伝子バリアントが複合遺伝されていた(図1)。

 これら3つの遺伝子のヘテロ変異による心臓の病態を証明するために,患者と同じ遺伝子変化になるような,3つの遺伝子変異をもつ”Triple-compound heterozygous mice”(Mkl2Q664H/+Myh7L387F/+Nkx2-5A118S/+)を作製したところ期待通りの異常が心臓にみとめられた(図4)。さらにiPS細胞を用いて病態解析もおこなって機能を証明している,素晴らしい研究である(図5)。


•NEJM

(1)感染症 

中国におけるヒトの熱性疾患に関連する新規分節ウイルス(A new segmented virus associated with human febrile illness in China

 中国北東部の熱性疾患に関連した,新たな分節ウイルス(segmented)が明らかになった。2017年,中国におけるダニ媒介性疾患のサーベイランスにより,原因不明の熱性疾患で内モンゴルの病院を受診した患者1例が同定された。その臨床症状はダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)感染症の臨床症状と類似していたが,TBEV RNA も抗ウイルス抗体も検出されなかった。初発患者から血液検体を採取し,ゲノム配列解析と電子顕微鏡法を用いて原因病原体の分離・同定を試みた。その結果,未知の分節RNAウイルスが同定され,フラビウイルス科jingmenvirus属に属し,Alongshanウイルス(ALSV)と命名された()。

 また,同病院内で強化サーベイランスプログラムを開始し,発熱,頭痛,マダニ刺咬歴で受診した患者のスクリーニングを行ったところ,発熱,頭痛,マダニ刺咬歴で受診した内モンゴル出身,黒竜江省出身の患者86例で,RT-PCR法によりALSV感染症が確認された。血清学的検査により,この疾患の急性期と回復期の検体を入手しえた19例全例でセロコンバージョンが起こっていたことが示された。


(2)REVIEW ARTICLE 

造影剤関連急性腎障害(Contrast-associated acute kidney injury

 CT検査や血管造影などで日常的に使用する造影剤の急性腎障害についての総説であり,一度目を通しておきたい()。


(TS)


※500文字以内で書いてください