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呼吸臨床
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「ほぼ週刊 トップジャーナル・ハック!」No. 82

公開日:2020.2.04


今週のジャーナル

Nature Vol. 577, No.7792(2020年1月30日)日本語版 英語版

Science Vol. 367, Issue #6477(2020年1月31日)英語版

NEJM Vol. 382, No.5(2020年1月30日)日本語版 英語版





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新型コロナウイルスの最新情報/腸内細菌を遺伝子操作してミツバチを守る「ハイテク農業」

Nature

1)感染症:News in focus 

コロナウイルス大流行について研究者が知りたいこと(What scientists want to know about the coronavirus outbreak

 中国武漢から広がった新型コロナウイルスについて,その塩基配列が解読された現在,これから明らかにすべき6つの課題が挙げられている。

 ①ウイルスはどれほど拡がりやすいのか? 

 基本再生産数(Basic reproductive number,ウィキペディア,感染症においては「一人の感染者が新たに感染させる人数」)は,現在1.4〜2.5と見積もられている。この数字は,2002〜3年のSARSや2009年の新型インフルエンザと同程度である。当面の施策の目標は,この基本再生産数を低下させることである。

 ②感染者は無症候でも感染源になるのか? 

 SARSと同じように,無症候の感染者の存在が明らかとなっている。「この無症候性感染の病態が,どれほど主要な病態なのか」は,感染制御上の重要な課題である。もし無症候性感染が新型コロナウイルスの主要な病態とすると,感染制御はとてつもなく困難となる。

 ③ウイルスの危険性は? 

 今回の新型コロナウイルスでは,感染者4,500人以上で100人程が亡くなっている。SARS感染者の1割が亡くなったことに比べると,致死率はSARS程ではないと予測される。

 ④ウイルスはどこから来たのか? 

 新型コロナウイルスの起源となる宿主として,コウモリやヘビが挙げられている。しかし,その決定的な根拠はない。新型コロナウイルスの塩基配列から,何らかの哺乳動物がウイルスの起源と考えられている。起源となる宿主を同定することは,今後の感染対策上とても重要である。

 ⑤ウイルスの塩基配列から学ぶべきことは? 

 感染者から検出された20以上の新型コロナウイルスについて,塩基配列が既に公開されている。その解析から,2019年11月にウイルスが出現したと推定されている。また動物からヒトへ,そしてヒトからヒトへと感染性を獲得していった遺伝子変化も推定されている。

 ⑥治療薬は開発可能なのか? 

 コロナウイルスの治療薬はない。塩基配列の解析から,SARSコロナウイルスと今回の新型コロナウイルスは,共通受容体を介してヒト細胞に感染すると考えられる。そこで,中国の国立研究所がウイルスと受容体との結合を阻害する薬剤を現在開発中である。また抗HIV薬であるリトナビルを新型コロナウイルスの治療薬として用いる試みが実際中国で行われている。


•Science

1)昆虫学:Reports 

共生細菌の遺伝子操作によりミツバチの免疫能を活性化し,病原体からミツバチを守る(Engineered symbionts activate honey bee immunity and limit pathogens

 ミツバチは授粉の媒介役として農業の分野で人類に多大な貢献をしている。その生存が世界的に脅かされている。原因はミツバチへの病原体の感染である。ミツバチに感染する主要な病原体として,外部寄生性のダニ「Varroa」とウイルス「DWV (deformed wing virus)」が挙げられる。このVarroa-DWVが地球中の温帯地域に蔓延し,ミツバチの脅威となっている。その対策としてVarroaのダニ殺虫剤はあるものの,Varroaがすぐ耐性化してしまうことから,長期間にわたり効果的,かつ安価で実用的な感染対策は今のところない。

 そこで今回のテキサス大学のグループは,ミツバチの腸内細菌に注目し,RNA干渉(RNAi)する二重鎖RNA(dsRNA)を生成するように腸内細菌を遺伝子操作した(概略図)。この遺伝子操作した腸内細菌をミツバチの腸内に接種すると,腸内細菌は腸内でdsRNAを生成し続け,ミツバチの体内に広くdsRNAが行き渡るようになった。これに対して外来性の核酸であるdsRNA対する免疫系が,ミツバチの体内では活性化され,関連する遺伝子発現が上昇した。

 腸内細菌が生成するdsRNAは,ミツバチ体内の細胞に取り込まれ,遺伝子発現を制御できることもわかった。具体的には,インスリン受容体遺伝子に干渉するdsRNAを腸内細菌に発現させたところ,インスリン/インスリン様増殖因子のシグナル経路が阻害され,働きバチを保育から採食と行動変容を促すことができた。そして,ウイルスであるDWVのゲノムを標的としたdsRNAを腸内細菌に生成させると,致死性のDWV感染に耐性となった。

 さらに驚くべきことに,ダニであるVarroaの遺伝子を標的としたdsRNAを腸内細菌に生成させたところ,ミツバチに寄生するダニを有意に減らすことができた。「ミツバチに寄生したダニが,ミツバチの脂肪体を餌として捕食する際に,ミツバチの体内に行き渡ったdsRNAを取り込んだこと」によって,ダニ細胞内の遺伝子発現が干渉されたものと考えられた。

「ミツバチを守るために,その腸内細菌に遺伝子操作をする」という抜群の発想力に,未来のハイテク農業を感じさせられました。

 

•NEJM

1)呼吸器:Original Article 

気胸に対する経過観察と治療との比較(Conservative versus interventional treatment for spontaneous pneumothorax

 自然気胸は,特発性と,COPDなどに合併して生じる二次性(続発性)に分けられる。二次性の自然気胸は再発も多く,ドレーン留置による脱気をすべきである。しかし,既存の肺疾患を有しないような特発性の自然気胸に対して,苦痛や危険を伴い,入院も必要とするようなドレーン留置が果たして必要なのか,はこれまでしっかりと検証されてこなかった。

 そこで今回,豪州のRoyal Perth Hospitalのグループが,初回片側で中等度以上の特発性自然気胸の患者316名を対象に,非盲検多施設非劣性試験を行った。154名が胸腔ドレーンによる脱気群に,162名が保存的な経過観察群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は,8週間以内の肺の再膨張である。

経過観察群のうち,25名(15.4%)の患者が,結局ドレーンによる脱気を要することになり,残り137名(84.6%)の患者への処置は行われなかった。脱気群23名と経過観察群37名のそれぞれ欠落データはあるものの,8週間以内の再膨張は,脱気群で131名中129名(98.5%),経過観察群で125名中118名(94.4%)に認められた。統計学的には,保存的な経過観察の非劣性が証明された。さらに,重大な有害事象や気胸の再発は,経過観察群で少なかった。気胸の再発がむしろ脱気群で多かった理由としては,「ドレーン留置による脱気が,比較的急速に肺の再膨張を促し,臓側胸膜の欠損部をさらに広げてしまったため」と考えられた。

 結論として,特発性自然気胸の患者に対して,「ドレーン留置を行わずに経過観察する」という治療選択の可能性が示された。


2)感染症:Original Article

2019新型コロナウイルスの初期の伝播動態(Early transmission dynamics of 2019-nCoV

 冊子版ではないが,ホームページのトップに,2019新型コロナウイルスについて,ウイルス伝播の倍加時間,基本再生産数,ヒト-ヒト伝播の根拠などを示す論文が掲載されている。


(TK)


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