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「ほぼ週刊 トップジャーナル・ハック!」No. 241

公開日:2023.6.21


今週のジャーナル

Nature  Vol.618 Issue 7965(2023年6月15日)英語版 日本語版

Science Vol.380 Issue 6650(2023年6月16日)英語版

NEJM  Vol. 388 Issue 24(2023年6月15日)英語版 日本語版








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腫瘍内不均一性の統合解析/全身性細胞レベルの加齢アトラス/慢性硬膜下血腫の内科治療

•Nature

1)腫瘍学:Article
腫瘍内転写不均一性の包括的解析(Hallmarks of transcriptional intratumour heterogeneity across a thousand tumours
 イスラエルのワイツマン科学研究所からの報告である。個々の単細胞RNAシークエンス(scRNA-seq)解析によって,腫瘍内不均一性(intratumour heterogeneity:ITH)がわかってきている。本研究では77個の別々の研究結果を統合して,24種類のがん種を含む1163個の腫瘍でRNA転写を解析した。その結果,「細胞周期G2/M」や「ストレス」といった遺伝子発現パターン(meta-program:MP)を41種類同定した。「MP20 MYC」や「MP6  低酸素」のように24種類のがん種に広く共有されているMPもあれば,「MP36免疫グロブリン」「MP32 皮膚色素沈着」のように特定のがん種に限定されているMPもあった(News & Viewsの図参照)。
 図1ではMPを同定した流れと,腫瘍内のリンパ球や内皮細胞を遺伝子発現データから同定する流れが図示されている。図2には今回同定した41種類のMPの一覧が示されている。図3には,24種類のがん種がそれぞれどのようなMPを有しているかが示されている。例えば,非小細胞肺癌では,「MP31 肺胞」,「MP24 線毛」,「MP23 分泌II」,「MP5 ストレス」が有意に多かった。図4では,腫瘍細胞のMPは,その発生母地となる上皮細胞のMPと類似していることが示されている。最後に図5では,腫瘍細胞以外の細胞(上皮細胞,線維芽細胞,マクロファージ,T細胞,B細胞,内皮細胞)は,腫瘍内環境を共有しているために,MPが似通っていることを示している。

•Science

1)細胞生物学:RESEARCH ARTICLE
ハエ細胞アトラスを用いて細胞レベルで加齢変化を解析する(Aging Fly Cell Atlas identifies exhaustive aging features at cellular resolution
 米国ヒューストンのベイラー医科大学からの報告である。この筆者らは,昨年3月のScience誌に,ショウジョウバエ(5日齢)全身の単核遺伝子発現アトラスを報告している。今回は30日齢,50日齢,70日齢でも同様の解析を行い,868,209個の核を用いて163種類の細胞における遺伝子発現の経時的変化を調べている(SUMMARYの図参照)。なお70日齢のショウジョウバエは,80〜90歳のヒトに相当する。
 今回筆者らは前回と同様に,ショウジョウバエを頭部と体部に分け,それぞれ核を単離した後に,単核RNAシークエンス(snRNA-seq)解析を行った(図1)。細胞は大きく17系統の細胞に分類され,最多な細胞は中枢神経系ニューロンで,続いて上皮細胞が多かった。
 次に,発現データのクラスター解析と機械学習,さらには手作業で検証することによって163種類の細胞を同定した(図2)。加齢に伴って,脂肪細胞の数は増える一方で,筋肉細胞の数はアポトーシスによって減っていた。
 図3では,加齢変化に伴って発現変化する遺伝子(differentially expressed gene:DEG)を解析した。大部分の細胞(~80%)で,5日齢から30日齢の間に50%超のDEGが発現変化しており,30日齢は加齢による遺伝子発現変化が最も劇的に生じる時期と考えられた。
 続いて今回の発現変化データから,生物学的年齢を予測する加齢時計(aging clock)モデルを構築した(図4)。頭部では外光受容体細胞,体部では扁桃細胞の発現変化がそれぞれ年齢予測に最も有用であった。そしてマウスの加齢時計遺伝子と合わせて検討した結果,加齢時計遺伝子として最終的に33遺伝子(うち31遺伝子はリボソームタンパク質を発現)を同定した。
 最後に,細胞の種類によって加齢変化が異なることを明らかにした(図5)。80%の細胞種では加齢によって発現遺伝子数が減り,残り20%の細胞種では加齢によって発現遺伝子数が増えていた。発現遺伝子数が増えていたのは,頭部の血球細胞や脳周囲の脂肪細胞であった。

•NEJM             

1)脳神経学:ORIGINAL ARTICLE
慢性硬膜下血腫に対するグルココルチコイド(Dexamethasone versus surgery for chronic subdural hematoma
  オランダで行われた他施設非盲検無作為化試験の報告である。慢性硬膜下血腫の術後10〜20%の患者は再燃することが知られており,慢性硬膜下血腫の病因として,軽度の頭部外傷だけでなく,炎症反応も考えられている。慢性硬膜下血腫に対するグルココルチコイドは50年以上前より使われており,手術後の再燃を防ぐ効果や手術自体を退避できる効果が期待されている。しかし,その効果は十分検証されておらず,2020年にはN Engl J Med誌に,英国で行われた多施設試験の結果が報告されている。その結果はグルココルチコイドの有用性を示すことができず,「再手術はデキサメタゾン群のほうが少なかったものの,デキサメタゾン群はプラセボ群と比較して,有害事象は多く,6カ月の時点の転帰は不良であった」。ただし,この2020年の試験では,参加した全症例の94%が手術を受けており,手術療法とグルココルチコイド療法の比較は困難であった。
 そこで,手術療法とグルココルチコイド単独療法との効果を比較する目的で,有症状の慢性硬膜下血腫患者を対象に,グルココルチコイドの非劣勢試験として本試験が行われた。
 その結果はやはり芳しいものではなく,デキサメタゾン群で安全性と転帰に懸念が生じたため,目標の420例のうち252例が組み入れられた時点で,データ安全性モニタリング委員会により試験は早期に中止された。組入れられた252例は,127例がデキサメタゾン群に,125例が手術群に割り付けられた。主要評価項目である3カ月後の時点での修正ランキンスケールスコアは,デキサメタゾン群が手術群よりも良好であることの補正共通オッズ比は0.55(95%信頼区間 0.34-0.90)であり,デキサメタゾンの非劣性は示されなかった。デキサメタゾン群症例の59%と手術群症例の32%に合併症が生じ,デキサメタゾン群症例の55%と手術群症例の6%にそれぞれ手術が追加された。
 有症状の慢性硬膜下血腫患者を対象に行われた本試験は,結局早期に中止され,デキサメタゾンの投与が,穿頭ドレナージに対して,3カ月後における機能転帰の非劣性を示すことができなかった。その原因として,手術適応の考え方が各施設によってばらついている点や,たまたまデキサメタゾン群により機能低下している方が割付られた点などが考察されている。

今週の写真:
映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」の中で飛ぶように売れていたキューバサンドイッチを食べてみました。
平べったく,かつ細長いので,ハンバーガーより手で持って食べやすいかも?

(TK)


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