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呼吸臨床
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「ほぼ週刊 トップジャーナル・ハック!」No. 270

公開日:2024.2.15


今週のジャーナル

Nature Vol.626 Issue 7998(2024年2月8日) 英語版 日本語版

Science Vol.383 Issue 66832024年2月9日英語版

NEJM  Vol. 390 Issue 6(2024年2月8日)英語版 日本語版








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未培養微生物の新規遺伝子ファミリー/肺癌の形質転換/乾癬に対する経口ペプチド製剤

•Nature           

1)微生物学:Article
未培養分類群の未知遺伝子の機能的および進化的な重要性(Functional and evolutionary significance of unknown genes from uncultivated taxa
 スペインのマドリード工科大学からの報告である。コンピュータの演算能力が飛躍的に進歩してきたお陰で,培養によって解析に必要なDNA量を準備できる微生物については,近年そのゲノム解析が精力的に行われてきた。しかし,全体の25〜50%を占めるとされている未培養の微生物については,そのゲノム解析が進んでおらず,それらの遺伝情報の機能的および進化的な意義の多くが不明である。今回筆者らは,これまで蓄積されてきた微生物ゲノム情報を解析することにより,機能的および進化的に重要な新規遺伝子ファミリーFESNovをまとめることに成功した。
 図1:メタゲノム解析により構築された149,842個の微生物ゲノム情報(未培養微生物のゲノム情報を含む,比較的粗悪なゲノム情報)と,19,642個の参照微生物ゲノム情報(分離培養後にDNA塩基配列を決定した,比較的高品質なゲノム情報),合わせて169,484個のゲノム情報を統合的に比較解析することによって,404,085個の新規遺伝子ファミリーFESNovを同定した。
 図2:今回同定した新規遺伝子ファミリーFESNovにおいて,ファミリーメンバー個々の機能をKEGGパスウエイやColabFoldによる蛋白質の構造予測を用いて予測し,さらにその機能を検証した。
 図3:新規遺伝子ファミリーFESNovは,古細菌と細菌のゲノムに広く認められ,特に未培養微生物のゲノムに多く認められた。
 図4:新規遺伝子ファミリーFESNovが1,034個の科において共有派生形質として認められ,さらにFESNovを用いることによって,未培養微生物において18個の門,20個の綱,90個の目を識別できるようになったことから,FESNovの系統学的有用性が示唆された。
 図5:575名のヒト便のメタゲノム解析データを,今回同定した新規遺伝子ファミリーFESNovを用いて再解析したところ,69個のファミリーメンバーが大腸癌患者の便中に著増していることがわかった。

•Science

1)腫瘍学:RESEARCH ARTICLE
癌原ドライバー遺伝子に対する細胞系譜特異的な不寛容が形質転換を制限している(Lineage-specific intolerance to oncogenic drivers restricts histological transformation
 米国コーネル大学の大御所Varmus研からの報告である。EGFR遺伝子変異陽性肺癌に対して用いられるEGFR-チロシンキナーゼ阻害薬について,癌細胞がもともとの腺癌から小細胞癌へ形質転換することによって耐性を獲得することが知られている。本論文では,EGFR遺伝子変異陽性肺癌と小細胞肺癌を同一個体内で発生するように遺伝子改変した「ERPMT」マウス(図1A)を作成して,Rb1とTrp53を欠損させMYCを強発現させると,腺癌は基底幹細胞を経て小細胞癌へと形質転換することを示している(PERSPECTIVEの図参照)。
 図1では,5カ所に遺伝子改変がされているERPMTマウスについて説明されている。1カ所目はDOX(ドキシサイクリン)で誘導されるL858R変異のEGFR遺伝子,2カ所目はCre発現で欠損するRb1遺伝子,3カ所目はCre発現で欠損するTrp53遺伝子,4カ所目はCre発現で強発現してくるT58A変異のMyc遺伝子,5カ所目はCre発現で強発現してくるtdTomaoto遺伝子である。このERPMTマウスに,腺癌の母地となる2型肺胞上皮細胞(AT2),あるいは小細胞癌の母地となる肺神経内分泌細胞(PNEC)でそれぞれ特異的に発現するCreをアデノウイルスで投与している。図1Bでは,AT2に小細胞癌が発生するような状態(Myc強発現・Rb1欠損・Trp53欠損)を作ってやっても,L858R変異のEGFR遺伝子を誘導すると,腺癌ができることを示している。一方,PNECに同様の状態(小細胞癌が発生するようなMyc強発現・Rb1欠損・Trp53欠損)を作ってやった場合,L858R変異のEGFR遺伝子が誘導されなければ(予想通りに)小細胞癌が発生するものの,L858R変異のEGFR遺伝子を誘導すると小細胞癌は発生しなくなってしまった。EGFR遺伝子変異陽性のシグナルは,小細胞癌の発癌に対して排他的に働いていた。
 図2では,AT2に小細胞癌が発生するような状態(Myc強発現・Rb1欠損・Trp53欠損)を作り,L858R変異のEGFR遺伝子を誘導した後に,その誘導を中止すると,一旦発生した腺癌が小細胞癌へ形質転換してしまった。そして小細胞癌が発生するような状態にした細胞(tdTomaoto陽性)の転写プロファイルを経時的に観察したところ,L858R変異のEGFR遺伝子の誘導を中止すると,腺癌細胞は未分化な基底幹細胞へ一旦収束した後に,爆発的に増殖する小細胞癌細胞へと形質転換していることがわかった。
 図3では,小細胞癌が発生するような状態(Myc強発現・Rb1欠損・Trp53欠損)をPNECに作ると小細胞癌を発生したものの,同じ状態をAT2に作っても小細胞癌は発生しなかったことから,細胞特異性があることを示している。
 図4では,基底幹細胞を経て小細胞癌へと形質転換するのに,PI3K依存性のAKTシグナルが重要であることを,Pten遺伝子を欠損させる(PI3K依存性のAKTシグナルを活性化する)ことによって示している。
 最後に図5では,腺癌から小細胞癌への形質転換におけるMyc強発現の意義を示している。Myc強発現を行わないと,半数のマウスでしか形質転換が起こらなかった。すなわち,Myc強発現は形質転換に必須ではないものの,形質転換の効率を向上させるように働いていることが示唆された。
 EGFR遺伝子変異陽性肺癌の小細胞癌への形質転換が動物実験で再現されたことにより,形質転換を早めに見つけたり,形質転換でEGFR-チロシンキナーゼ阻害薬に耐性化しやすい癌を識別する,といった臨床応用が今後期待される。

•NEJM

1)皮膚科学:ORIGINAL ARTICLE
尋常性乾癬に対するインターロイキン-23 受容体拮抗薬(An oral interleukin-23–receptor antagonist peptide for plaque psoriasis
  肘などにできやすい局面型乾癬に対するインターロイキン-23受容体(IL-23R)拮抗ペプチドを試した第2相用量設定試験である。Janssen社の資金援助で行われた試験で,カナダ・ハミルトンのマクマスター大学からの報告である。
 中等症~重症の局面型乾癬患者255例が,25mg 1日1回投与群,25mg 1日2回投与群,50mg 1日1回投与群,100mg 1日1回投与群,100mg 1日2回投与群,プラセボ投与群の計6群に無作為に割り付けられ,IL-23R拮抗ペプチドを経口で16週間投与された。
 主要評価項目は,乾癬の面積と重症度の指標(PASI,各領域の体表病変の範囲の評価と重症度の評価を組み合わせた評価指標)がベースラインから75%以上の減少(PASI 75)を示した患者割合である。16週の時点でPASI 75を達成した患者の割合は,プラセボ群(9%)に対し,IL-23R拮抗ペプチド25mg 1日1回群 37%,25mg 1日2回群 51%,50mg 1日1回群 58%,100mg 1日1回群 65%,100mg 1日2回群 79%と,有意な用量反応関係のある改善効果を認めた(図1A)。有害事象が1回以上発現した患者の割合は,IL-23R拮抗ペプチド群全体で52%,プラセボ群で51%,と同程度であった。IL-23R拮抗ペプチドの用量依存性に増加するような有害事象は認められなかった。
 経口で投与可能なIL-23R拮抗ペプチドの有効性を示す報告であり,今後局面型乾癬に限らず,過剰な自己免疫に起因するような疾患に広く臨床応用されることが期待される。
 
今週の写真:
前回お昼時の行列で断念した人気のラーメン屋さんに,今回は11時から並んでやっと食べることができました。濃厚鶏白湯スープの細麺で,完食完飲の大満足でした。

(TK)

※500文字以内で書いてください