生成AIとしてのChatGPT(generative pretrained transformer)が衝撃的に公開されて2年,数カ月ごとの競合企業からの新規生成AIの公開,性能Updateに対し,どの段階で本格的に踏み込むのかの戸惑い?
そんな中で本年は「医師による医師のためのChatGPT(大塚篤司著,医学書院,2024)」が医学界への刺激となり,ことに若手医師を中心にその活用が燎原の火のように広がっている。
TJHは,医学・生物学で最もホットなNature,Science,NEJM誌の論文をリンク等で紹介する手法で,2018年より若手の先生方に隙間時間対応の情報提供をしてきた。一つには英語という壁,一つには基礎医学という,いわれない偏見への対応でもあった。
しかしもはや英語という壁は,Attention,Transformer応用のAI自動翻訳が,ほぼ瞬時に日本語訳してくれる。筆者も本年は大いに愛用するとともに,斜め読み技術としての「漢字かな交じり文」の日本人の発明の偉大さを感じている。
一方基礎医学という偏見の壁は,21世紀医学となり崩れ,臨床医学の基礎素養という面,あるいは現実にscRNAseqの臨床病態解析応用というように,直接的に臨床学問へと転じている。筆者はかねてより,分子生物学は一つの言語としてなじむ必要性を,若手医師に話してきた。肝臓の機能は何かという20世紀的医学言語は,21世紀医学的言語では,例えばP53機能,あるいはEGFR機能は何かということになる。ようやく「論文に出る遺伝子/デルジーン300(坊農秀雅/編,羊土社,2024)」が,かつての単語帳のようにその必要性を補っている。
では生成AIを逆にどう取り組むのか?
すでにNEJMはAI専門誌を始めている。周知のように生成AIはハルシネーションが問題であるが,論文要約などは論文紹介の手始め,入り口としていいのかもしれない。ここ1カ月,執筆者先生方と情報交換の上,折衷的に生成AIを使用して行く方針としました。文章とは,いわばその人のLLM(large language model)が紡ぎ出す結果であり,生成AI文章にはいわゆる「…節」はなくなる。要約+「…節」解説が面白いのか? 読者の皆様にはどちらが良いのか? コメントがいただければ幸いです。
同時に多少煩雑にはなるが,Nature,Science,NEJMサイトのURLを示し,そこに入りGoogle Chrome上で目次を日本語訳化して目を通すのも,時間節約学習となる。この意味では,Nature Medicine,Science Translational Medicine,Cell,Cancer Cellなどの毎号のサイト案内も今後皆様には重宝かもしれない。雑誌目次に目を通す重要性は,NIH留学時,図書館で多くの研究者が対応していたことを思い出す。それが研究活動の第一歩であり,同時にルーティーンでもある。AI翻訳のおかげで,それが日本語で可能な時代となった。
以上,生成AI時代へのトップ・ジャーナル・ハックの対応に関して,皆さまへのお知らせを記しました。
(貫和敏博,2024年12月10日)