•Nature
1)がん
腫瘍全体のRNAスプライシング異常は治療標的となり得る共通ネオアンチゲンを生じる(Tumour-wide RNA splicing aberrations generate actionable public neoantigens) |
免疫系によるがん特異的抗原の認識を利用したがん治療は有望であるが,体細胞変異が少なく腫瘍内不均一性が大きい腫瘍では,その有効性は限定的である。
セントラルドグマにおいてゲノムからmRNAが転写されRNAスプライシング(
Pre-mRNA スプライシング)後の成熟したmRNAからタンパク質が翻訳される。多くのがん細胞ではゲノムに遺伝子変異(体細胞変異)が多数生じていることが知られている。遺伝子変異のなかでもドライバー遺伝子変異が認められる癌種では特異的な分子標的薬が有効である。一方でTMB(Tumor Mutation Burden)で示されるような多数の遺伝子変異により異常タンパク質であるネオアンチゲンが生成されており,免疫チェックポイント阻害薬によりT細胞を中心とした癌免疫機構による治療が有効な腫瘍も存在する。実は癌細胞においては体細胞変異以外にも「RNAスプライシング異常」によってネオジャンクション(NJ)を生じ,ネオアンチゲンが作られることが知られているが,これまでその特性については不明であった。
本論文は米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の岡田秀穂先生らからの,がん免疫治療として有効な各種腫瘍横断的なRNAスプライシング異常によるネオアンチゲンについての研究報告である。
まずTCGA(The Cancer Genome Atlas)のデータベースから12種類のがんについてRNAスプライシング異常について調べたところ,複数の癌種に共通な抗腫瘍免疫の標的となるような共通のスプライシング異常が同定された(
Fig. 1)。抗腫瘍免疫の有効性で問題となるのは同じ癌種でも患者間での多様性があり,さらに同じ腫瘍内においてもネオアンチゲンの発現の不均一性が認められ,また原発巣と転移部位での多様性も知られている。神経膠腫,中皮腫,前立腺癌,肝臓癌などの同一腫瘍内の複数箇所からの検体における検索では,スプライシング異常の不均一性が認められた。一方で腫瘍全体から検出される共通のスプライシング異常も確認された(
Fig. 2)。脳腫瘍・グリオーマ(神経膠腫)ではIDH(isocitrate dehydrogenase)遺伝子の有無は様々な予後との相関が報告されているが,スプライシング異常についてもIDH遺伝子変異陽性グリオーマではより多くのスプライシング異常が確認された(
Fig. 3)。これらのRNAスプライシングによるネオアンチゲンは,データベース上だけではなく実際の腫瘍細胞により内因的に作られて抗原提示されていることが確認された。さらに詳細な解析によりネオアンチゲン特異的CD8
+ T細胞について解析すると,がん細胞死を引き起こすのに十分であることも示された(
Fig. 4)。本研究で示されたRNAスプライシング異常に起因する腫瘍全体の共通ネオアンチゲンの治験は今後のあらたな癌治療への発展が期待される。本論文についてはNews and Viewsでも取り上げられてわかりやすい
図とともに解説されている(
リンク)。
•Science
1)免疫
食物に対する免疫反応を引き起こす抗原提示細胞とT細胞の相互作用の同定(Identification of antigen-presenting cell–T cell interactions driving immune responses to food) |
腸管における免疫反応では炎症を引き起こして病原性微生物からは守ってくれる一方で,食事や腸内細菌に対しては反応せずに抑制されて免疫寛容になっている。免疫寛容には末梢性制御性T細胞〔peripheral regulatory T cells(pTregs)〕がかかわり(
制御性T細胞;regulatory T cell),炎症性反応にはTヘルパー細胞(Th)が働いている。こうした免疫反応は抗原提示細胞(APC)からT細胞への抗原提示によって引き起こされるが,APCにも樹状細胞であるcDC1やcDC2の他にRorgt
+APCs(
リンク)などがあり,炎症と寛容という相反する免疫反応におけるAPCとT細胞の相互作用の詳細については不明であった。米国ニューヨークのロックフェラー大学からの本研究では,LIPSTIC(Labeling Immune Partnerships by SorTagging Intercellular Contracts)(
リンク)という新技術によって,食物抗原特異的に抗原提示される際のT細胞とAPCについて詳細に解析することが可能となった。
抗原としてはOVAを用い,これに反応するT細胞株であるOT-IIの組み合わせを用いた実験系であるが,抗原提示の際にAPC側のCD40と活性化したT細胞ではCD40Lが発現して結合することを利用している。やや複雑であるが,CD40Lにsortage Aというタンパク質を融合させておき,一方でsortage Aと結合するG5という分子をCD40に融合させた系を作成している。APCがT細胞に抗原提示した際に本来はCD40LとCD40が結合するが,この系では両者が結合しようとして近づくと(すなわち抗原提示された際に)融合分子であるsortage AとG5が結合する。sortage Aは酵素でもあり,その基質であるLPETGをbiotinと融合した分子を投与することによって,CD40Lが発現したT細胞に抗原を提示したAPC(CD40Lについたsortage Aと反応したLPTEG-biotinによってbiotin標識される)がbiotin陽性となり同定できるという仕組みである(
Fig. 1A)。
経口免疫寛容の系としてOVAを経口投与して機能評価しているが,pTregsを誘導するAPCとして定常状態としてcDC1sとRorgt
+APCsが同定された(
Fig. 2)。一方で
Strongyloides venezuelensisで蠕虫感染を引き起こすと免疫寛容性のAPCs(cDC1sとRorgt
+APCs)と炎症性のAPCs(主にcDC2)の比率が変化して食物抗原特異的なpTregsが減少することによって免疫寛容が減弱することが明らかとなった(
Fig. 3)。炎症を引き起こすcDC2は増加し蠕虫に対するTh2を活性化するが,食物抗原の提示には関与せず,食物抗原特異的なTh2は誘導していなかった(
Fig. 4)。すなわち,抗原の種類により,T細胞に抗原提示するAPCが異なり,引き起こす免疫寛容と炎症をうまく分けていることが明らかとなった。論文冒頭の
まとめ図がわかりやすい。
•NEJM
1)感染症
血流感染患者に対する抗菌薬の7日間投与と14日間投与との比較(Antibiotic treatment for 7 versus 14 days in patients with bloodstream infections) |
カナダのトロント大学を中心とした7カ国74病院で行われた血流感染患者に対する抗菌薬の多施設共同非劣性試験(BALANCE試験)の報告である。血流感染は高い合併症発生率および死亡率と関連し,早期の適切な抗菌薬治療が重要である。抗菌薬治療投与期間については一般的には少なくとも7日間で病態により10~14日間と考えられているが,実は明確なエビデンスははっきりとしなかった。
そこで集中治療室(ICU)患者を含む血流感染を有する入院患者に対して抗菌薬を7日間投与する群と14日間投与する群に無作為に割り付け,7日間投与群の血流感染の診断後90日までの全死因死亡について14日間投与する群に対する非劣勢を検討した。非劣性マージンは4パーセントポイントとした。抗菌薬の種類,用法・用量,投与経路は治療チームの判断により決定された.重度の免疫抑制状態の患者,長期間の治療を必要とする患者,培養が1セットのみでコンタミネーションの可能性がある患者および培養から黄色ブドウ球菌が分離された患者は除外された。
3,608例がのうち1,814例が7日間投与群,1,794例が14日間投与群に無作為化され,intention-to-treat解析の対象となった(
Fig. 1)。ICU入院患者が55.0%,一般病棟入院患者が45.0%であった。感染場所は市中(75.4%),病棟(13.4%),ICU(11.2%)に分類された。菌血症の感染源は尿路(42.2%),腹部(18.8%),肺(13.0%),血管カテーテル(6.3%),皮膚または軟部組織(5.2%)の順で多かった(
Table 1)。診断後90日までの死亡は抗菌薬投与7日間投与群で261例(14.5%)あり,14日間投与群で286例(16.1%)であり,7日間投与群の非劣性が示された(
Table 2)。割り付けられた期間より長く投与された患者の割合は7日間群で23.1%,14日間群で10.7%であった。結論として血流感染の入院患者において,抗菌薬の7日間投与は14日間投与に対して非劣性であった。
QUICK TAKEでは1分40秒の動画でわかりやすく解説されている。
(鈴木拓児)