[Essays] A tale of two domains: "breathing movement" and "gas-exchange/lung science" - A personal history and the significance of breathing in the respiratory medicine
No 5: A Path from Bodywork to Fascia and Anatomy Train through the Western Quest
Toshihiro Nukiwa*
*Professor Emeritus, Tohoku University
呼吸臨床 2018年2巻7号 論文No.e00066
Jpn Open J Respir Med 2018 Vo2. No. 7 Article No.e00066
DOI: 10.24557/kokyurinsho.2.e00066
掲載日:2018年7月9日
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(第4回はこちら)
はじめに
ガス交換での呼吸筋の運動はFasciaを介して全身につながるという議論をしている。
前回は,一体Fasciaとは何か? なぜ今まで注目されなかったのか? どう研究を進めるのか? などを序論として述べた。今回はそのFasciaのネットワークがいかにSoma(全身)と関連するかという面を考えよう。
Bodyworkという言葉はどのくらい認知されているだろうか? 英語辞書で見ると,まず自動車の外装工程,あるいは外装工という意味で,その次に身体への働きかけ(therapeutic touching or manipulation of the body by using specialized techniques:Merriam Webster)がでてくる。Fasciaの連続体である,腱・筋膜系(後述するAnatomy train)に沿って身体を調整することは,まさにbodyworkという言葉にふさわしい。われわれの身体(Fasciaのネットワークで成り立つ)は加齢とともに柔らかさを失う。こうした自然の理に対応するため,広くマッサージと呼ばれるbodyworkは,歴史的にも世界各地に存在する。一方,スポーツが職業となった20世紀以降,その過酷な身体疲労のケアにボディーワークは必須である。この「病気とはいえないがケアが必要な身体」をどう調整して行くのか?
第5回は現代医学が埋もれたまま放置しているAnatomy Trainと呼ばれる領域(全身体Somaの連携性とその調整)を述べてみよう。われわれが認識すべきは,こうした展開が,一方で西欧医学を生んだ同じ西欧文化の一部から始まった点である。後述するように,約100年の時間を経て,20世紀末に,まったく新しいFasciaという領域を拓きつつある。こうしたダイナミズムは,東洋の人間として,本来「経絡」の概念をもちながら,その後の展開がなぜ進まなかったかを,自問すべきでないか。重要なことは,このSomaの連携性には呼吸運動がトリガーの役をはたしている点であるが,この点はなお今後の課題である。