【投稿/原著】抗線維化療法を受けた特発性肺線維症(IPF)患者の意識調査:わが国におけるIPF患者と担当医師の意識調査(第3報)
冨岡洋海*1,紙田光豊*2,東 久弥*2
*1神戸市立医療センター西市民病院呼吸器内科
*2日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社(〒141-6017 東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark Tower)
Attitudes of patients with idiopathic pulmonary fibrosis (IPF) toward antifibrotic treatment: a survey of patient and physician views in Japan (Part 3)
Hiromi Tomioka*1, Mitsutoyo Kamita*2, Hisaya Azuma*2
*1Department of Respiratory Medicine, Kobe City Medical Center West Hospital, Hyogo
*2Nippon Boehringer Ingelheim Co., Ltd., Tokyo
Keywords:特発性肺線維症(IPF),抗線維化療法,意識調査,医師患者コミュニケーション,患者の観点/idiopathic pulmonary fibrosis (IPF), antifibrotic treatment, attitude survey, patient-physician communication, patients' perspectives
呼吸臨床 2020年4巻5号 論文No.e00101
Jpn Open J Respir Med 2020 Vol. 4 No. 5 Article No.e00101
DOI: 10.24557/kokyurinsho.4.e00101
受付日:2020年4月9日
掲載日:2020年5月15日
©️Hiromi Tomioka, et al. 本論文はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスに準拠し,CC-BY-SA(原作者のクレジット[氏名,作品タイトルなど]を表示し,改変した場合には元の作品と同じCCライセンス[このライセンス]で公開することを主な条件に,営利目的での二次利用も許可されるCCライセンス)のライセンシングとなります。詳しくはクリエイティブ・コモンズ・ジャパンのサイト(https://creativecommons.jp/)をご覧ください。
わが国の特発性肺線維症(IPF)患者および担当医師を対象に行われた初めてのアンケート調査から,抗線維化薬を処方されたことがあると回答した患者を抽出し,同薬による治療を行って良かったと感じている患者群(グループ1:55例)と感じていない患者群(グループ2:52例)の比較を行った。グループ1はグループ2に比べ,担当医師の説明をわかりやすいととらえ,IPFや抗線維化療法に関するより多くの情報を得ている傾向が認められた。
特発性肺線維症(IPF)は,慢性かつ進行性の経過をたどる原因不明の間質性肺炎である[1]。IPFは予後不良の疾患であり,これまで有効な治療薬がなかったが,進行を抑制する抗線維化薬の登場[2]によって,IPFの予後因子のひとつである肺機能の低下抑制効果から,さらには生命予後の改善にも期待が持たれている[3][4][5]。しかし,現在承認されている2つの抗線維化薬(ピルフェニドン,ニンテダニブ)は,どちらも副作用を有する比較的高価な薬剤であり,実際に治療を受ける患者からの評価は重要である。また,現在のIPFの治療目標は「進行を遅くする」ことであり[6],患者にとっては治療効果が実感しにくい点も問題である。われわれは,わが国のIPF患者および医師を対象とした初めてのアンケート調査を実施し,その結果をさまざまな視点から検討し報告してきた[7][8]。本報告では,抗線維化治療を受けたIPF患者に焦点を絞り,抗線維化療法に対する患者の意識調査の結果を集計し報告する。
1.対象患者
独立した市場調査会社,株式会社プラメドが運営する医師向け会員サイトに登録している医師から,既報[7][8]に示した方法で選出された選抜対象医師が調査期間中に担当IPF患者を診察した際,患者にアンケートの趣旨を説明したうえで回答を依頼した。この調査が製薬会社によって支援され,匿名の上で公表されることを理解し,承諾した患者に対しアンケートを送付した。患者対象アンケートは,独立した市場調査会社,株式会社インテージヘルスケアによって,2019年5月13日から6月21日の期間に郵送留置き方式で行われた。調査参加患者には謝礼金が支払われた。
2.アンケート方法
患者対象アンケート全文はURL(
https://kokyurinsho.com/datas/media/10000/md_1638.pdf)からダウンロードできる。設問「抗線維化薬による治療を行ってみて,あなたは以下についてどの程度同意されますか。抗線維化薬による治療を行って良かった」に対して「とてもそう思う」あるいは「そう思う」と回答した患者群と,それ以外の「ややそう思う」「どちらとも言えない」「あまりそう思わない」「そう思わない」「全くそう思わない」のうちいずれかを回答した患者群の2群に分けて,前者をグループ1:抗線維化薬による治療を行なって良かったと感じている患者群,後者をグループ2:抗線維化薬による治療を行なって良かったとは感じていない患者群として,両群の比較検討を行った。
3.統計解析
両群間の比較には,数的データについてはstudent-t検定,あるいはWilcoxon順位和検定,質的データについてはχ二乗検定,あるいはFisherの正確検定を用い,p<0.05を統計的有意とした。
1.参加患者の選抜,背景
既報[7][8]に記載したとおり,医師対象アンケートに回答済みの医師78名の各担当IPF患者210名にアンケートを依頼し,158名から回答が得られた(回収率75%)。この中から,アンケートに記載されている「ここからはピレスパ(ピルフェニドン)またはオフェブ(ニンテダニブ)(以下,抗線維化薬)を処方された方にお伺いします」以下の複数の質問に回答した患者(n=107,設問によっては未回答例あり)を対象とした。
参加患者の背景を表1に示す。男性80例,女性27例で,年齢は70歳台が半数以上を占め,IPF治療のための通院頻度は,70%以上の患者が1カ月に1回であった。医療機関受診のきっかけは,咳嗽,呼吸困難などの症状によるもの,また,健診での胸部異常影によるものが,それぞれ43.0%,40.2%,41.1%であった。最初の医療機関受診からIPF診断までの期間は中央値3カ月(範囲:1カ月未満〜120カ月)であり,IPFの治療について説明を受けた時期は,初診時が22.4%,診断時が43.0%であった。一方,診断から4回目以降の受診時であったと回答した患者も6.5%みられた。IPF診断から抗線維化薬治療開始までの期間は中央値3カ月(範囲:1カ月未満〜84カ月)であった。
表1 参加患者の背景
設問「抗線維化薬による治療を行ってみて,あなたは以下についてどの程度同意されますか。抗線維化薬による治療を行って良かった」に対しての回答結果を図1に示す。「とてもそう思う」「そう思う」と回答した患者はそれぞれ21例(19.6%),34例(31.8%)であり,これらをグループ1:抗線維化薬による治療を行って良かったと感じている患者群,「ややそう思う」「どちらとも言えない」「あまりそう思わない」「そう思わない」「全くそう思わない」の回答はそれぞれ26例(24.3%),22例(20.6%),3例(2.8%),1例(0.9%),0例で,これらをグループ2:抗線維化薬による治療を行って良かったとは感じていない患者群に分けた。なお,これらの患者は,既報[8]で述べたとおり,すべて紹介を受けた医師と互いに紐付いており,各担当医師による厚生労働省特定疾患認定基準重症度分類別の評価も行ったが,軽症の患者(I〜II度)と重症の患者(III〜IV度)においても,グループ1の割合はそれぞれ52.5%,50.7%と差は認めなかった。
図1 設問「抗線維化薬による治療を行ってみて,あなたは以下についてどの程度同意されますか。抗線維化薬による治療を行って良かった」に対しての回答
全体(n=107)と厚生労働省特定疾患認定基準重症度分類別(I‐II度:n=40,III‐IV度:n=67)でグラフに示した。
同様に,設問「他のIPF患者さんに抗線維化薬を勧めたい」に対し,「とてもそう思う」「そう思う」「ややそう思う」「どちらとも言えない」「あまりそう思わない」「そう思わない」「全くそう思わない」の回答(n=104)は,それぞれ13例(12.5%),32例(30.8%),26例(25.0%),28例(26.9%),5例(4.8%),0例,0例で,「抗線維化薬による治療を行って良かった」に対する回答と同様の傾向であった。
2.グループ1:抗線維化薬による治療を行って良かったと感じている患者群とグループ2:抗線維化薬による治療を行って良かったとは感じていない患者群の比較
患者背景について,グループ1とグループ2との比較では,性別,年代,IPF治療のための通院頻度,IPF診断から抗線維化薬治療開始までの期間について,両群間に差はなかった。IPF診断から抗線維化薬治療開始までの期間はグループ1で有意に短く(p=0.0288),医療機関受診のきっかけにおいて,健診での呼吸機能異常によるものが,グループ1で有意に多い結果であった(p=0.0495)。
次に,設問「抗線維化薬による治療を始める際,先生からはどのような内容の説明を受けられましたか」に対する回答結果を図2に示す。グループ1とグループ2との間で有意差がみられた項目は,「抗線維化薬は長期にわたり病気の進行を抑制する効果がある薬であること」(p=0.035),「治療にかかる費用」(p=0.010),「抗線維化薬は飲み続けなければいけないこと」(p=0.016),「通院治療であるため,仕事や家事への影響が少なく今までと同じ生活ができること」(p<0.001),「抗線維化薬は長期にわたる安全性が確認されている薬であること」(p=0.012)で,いずれもグループ1において高い結果であった。
また,設問「抗線維化薬による治療を始める際に受けた先生からの説明はあなたにとってわかりやすい説明でしたか」に対し,「とてもわかりやすかった」または「わかりやすかった」と回答した患者の割合は,グループ1では85.2%であったのに対し,グループ2では37.5%と有意差を認めた(p<0.001)(図3)。
図2 設問「抗線維化薬による治療を始める際,先生からはどのような内容の説明を受けられましたか」に対する回答結果
グループ1:抗線維化薬による治療を行って良かったと感じている患者群,グループ2:抗線維化薬による治療を行って良かったとは感じていない患者群(本文参照)の回答の割合をグラフに示した。χ二乗検定による両群の比較結果(p値)をグラフ外側に示した。p<0.05を統計的有意とし,*で示した。
図3 設問「抗線維化薬による治療を始める際に受けた先生からの説明はあなたにとってわかりやすい説明でしたか」に対する回答結果
グループ1,グループ2(図2,本文参照)の回答の割合をグラフに示した。「とてもわかりやすかった」または「わかりやすかった」と回答した患者の割合は,グループ1では85.2%,グループ2では37.5% (p<0.001)であった。
次に,設問「抗線維化薬による治療を始めることを先生から伝えられたときのお気持ちをすべてお知らせください」に対する回答結果を図4に示す。グループ1ではグループ2と比較し,「期待(希望)」(p=0.003),「前向き」(p=0.008),「安心」(p=0.02),「諦め」(p=0.03)において有意に高い結果であった。
図4 設問「抗線維化薬による治療を始めることを先生から伝えられたときのお気持ちをすべてお知らせください」に対する回答結果
図に示した17項目から当てはまる項目すべてを回答させた。グループ1,グループ2(図2,本文参照)の回答の割合をグラフに示した。χ二乗検定による両群の比較結果(p値)をグラフ外側に示した。p<0.05を統計的有意とし,*で示した。
設問「抗線維化薬の情報として,以下のそれぞれの情報についてどの程度重要とお考えになりますか」に対し,各項目において「とても重要である」または「重要である」と回答した患者の割合を図5に示す。グループ1とグループ2との間では,「副作用の対応方法」と「各抗線維化薬で起きる可能性のある副作用について」を除くほとんどの項目において有意差を認め,特に,「抗線維化薬を服用することで生存を延長する可能性があること」(p=0.001)や「治療目標として,病気の進行を抑制することが大事であること」(p<0.001)などで顕著な認識の違いがみられた。
図5 設問「抗線維化薬の情報として,以下のそれぞれの情報についてどの程度重要とお考えになりますか」に対する回答結果
グループ1,グループ2(図2,本文参照)の回答の割合をグラフに示した。グループ1,グループ2で「とても重要である」または「重要である」と答えた患者の割合をχ二乗検定によって比較し,その結果(p値)をグラフ外側に示した。p<0.05を統計的有意とし,*で示した。
最後に,設問「現在,あなたがIPFの診療を受けている先生との以下のコミュニケーションに対するお考えをお知らせください」に対し,「十分に説明されている」(レベル1)から「説明されていない」(レベル7)までの7段階に分けた場合,各項目においてレベル1または2と回答した患者の割合を図6に示す。すべての項目において,グループ1はグループ2と比較し有意に高い割合を示していた。
図6 設問「現在,あなたがIPFの診療を受けている先生との以下のコミュニケーションに対するお考えをお知らせください」に対する回答結果
図に示した6項目について,「十分に説明されている」(レベル1)から「説明されていない」(レベル7)までの7段階で回答させた。グループ1,グループ2でレベル1またはレベル2と答えた患者の割合をχ二乗検定によって比較し,その結果(p値)をグラフ外側に示した。p<0.05を統計的有意とし,*で示した。
本報告では,わが国のIPF患者および医師を対象に行われた初めてのアンケート調査から,抗線維化薬を処方されたことがあると回答した患者107例を抽出し,抗線維化療法についての担当医師からの説明やそれに対する印象,また,担当医師とのコミュニケーション,そして実際に抗線維化療法を受けてみての印象などについて検討を行った。海外においては,質的研究を中心として,難治性呼吸器疾患の代表的疾患であるIPFに罹患している患者の意識・観点を探る研究がなされているが,本邦ではこのような調査はなく,また,海外においても抗線維化療法を受けているIPF患者を対象としたものは少なく[9][10],貴重なものである。
既報[7][8]で述べたとおり,われわれが参考としたMaherら[10]によるカナダおよび欧州数ヵ国でのアンケート調査では,ピルフェニドンあるいはニンテダニブの投与を受けたIPF患者60例のうち38例(63%)が抗線維化療法を“positive”あるいは“very positive” と捉えていた。本報告においては,設問「抗線維化薬による治療を行って良かった」に対して「とてもそう思う」「そう思う」「ややそう思う」と回答した患者はそれぞれ19.6%,31.8%,24.3%であり,一概に比較はできないものの,ほぼ同じ満足度を示していた。また重要な点は,厚生労働省特定疾患認定基準重症度分類別の検討でも満足度の分布に違いはなく,呼吸器症状のより乏しいと思われる軽症例においても同じような満足度が得られていたことである。よって,抗線維化療法の早期治療介入によるメリット[11]が期待される軽症例に対しても,患者の満足度を得るべく,治療介入を検討すべきである。
本報告においても,Maherらの報告[10]と同様,すべての患者が抗線維化療法に満足していたわけではなく,設問「抗線維化薬による治療を行って良かった」に対して「ややそう思う」「どちらとも言えない」「あまりそう思わない」「そう思わない」「全くそう思わない」のいずれかを回答した患者を「抗線維化薬による治療を行なって良かったとは感じていない患者群」(グループ2)として, 「抗線維化薬による治療を行なって良かったと感じている患者群」(グループ1)と比較することで,その要因を探った。
まず,グループ1,2の背景因子の比較では,IPF診断から抗線維化薬治療開始までの期間において,グループ1で有意に短い結果(p=0.03)であった。先のMaherら[10]によるアンケート調査においても,一部の患者では早期治療がなされなかったことについての不満があることが報告されており,IPF診断後,すみやかな抗線維化療法導入が患者の満足度を上げることにつながる可能性が示唆された。
次に,抗線維化療法開始時の担当医師からの説明内容(設問「抗線維化薬による治療を始める際,先生からはどのような内容の説明を受けられましたか」)に関しては,「疾患進行を抑制する効果」をはじめとして,6項目において有意差を認めた(図2)。この結果からは,グループ1:すなわち抗線維化薬による治療を行って良かったと感じている患者群は,グループ2:抗線維化薬による治療を行って良かったとは感じていない患者群と比較し,担当医師からIPFや抗線維化療法に関するより多くの情報を得ている様子がうかがわれた。海外の報告においても,IPF患者は治療を含めたIPFの情報の少なさに不満を感じており[9][10][12][13]14],また,ほとんどの患者は担当医師からの情報提供を望んでいる実態も報告されている[10]。ただし,われわれが既報[8]で報告したとおり,多くの医師が説明したにもかかわらず患者の印象に残っていない内容もあり,必ずしも医師の意図したとおりに説明内容が伝わっていない可能性もあると思われる。この点に関しては,その次の設問「抗線維化薬による治療を始める際に受けた先生からの説明はあなたにとってわかりやすい説明でしたか」に対する回答結果が重要である。すなわち,抗線維化療法開始時の担当医師の説明が「とてもわかりやすかった」または「わかりやすかった」と回答した患者の割合は,グループ1で85.2%,グループ2で37.5%と大きな差(p<0.001)を認めたこと(図3)である。これらの結果から,抗線維化療法開始時には,担当医師は患者にもわかりやすい十分な説明を行ったうえで,確実なインフォームドコンセントを得るように務めることが,抗線維化療法に対する患者の満足度を上げることに繋がると考えられる[10][15]。
次に,設問「抗線維化薬による治療を始めることを先生から伝えられたときのお気持ちをすべてお知らせください」に対する回答結果も興味深い(図4)。グループ1ではグループ2と比較し,「期待(希望)」,「前向き」,「安心」をより高い頻度で回答しており,抗線維化療法をよりポジティブに受け止めている様子がうかがわれた。この点に関しては各患者の性格の違いが考慮されるものの,先に述べた担当医師による確実なインフォームドコンセントの影響もあると思われる。
そして,設問「抗線維化薬の情報として,以下のそれぞれの情報についてどの程度重要とお考えになりますか」に対する回答結果は,グループ1とグループ2との間で多くの項目について有意差を認めた。担当医師は,抗線維化薬のエビデンスである疾患進行抑制,さらにはその結果としての予後の改善効果の可能性について,患者に繰り返し説明を行うべきである。
最後に,設問「現在,あなたがIPFの診療を受けている先生との以下のコミュニケーションに対するお考えをお知らせください」に対する回答結果は,本検討における最も重要なものであろう。すべての項目において,グループ1はグループ2と比較して有意に高く,グループ1:すなわち抗線維化薬による治療を行って良かったと感じている患者群は,グループ2:抗線維化薬による治療を行って良かったとは感じていない患者群と比較し,担当医師とのコミュニケーションがより良好であるという結果は十分納得できるものである。
本研究の限界としては,既報[7][8]でも述べたとおり,サンプル数が比較的少なく,限られた施設の医師およびその担当患者を対象としていること,またアンケートに回答した患者に限定されていることから,わが国の抗線維化療法を受けているIPF患者の全体を表していない可能性が考えられる。また,抗線維化療法に関連する副作用の情報が得られていない点も憂慮される。欧州3カ国で行われたピルフェニドン治療を受けた45例のIPF患者に対するインタビュー調査では,ピルフェニドン治療に対する満足度は,0(満足でない)〜10(とても満足)で7.4であったが,副作用を経験している患者では満足度がより低い傾向があると報告されている[9]。さらには,薬物治療に対する患者による評価の方法論も問題となる。患者の満足度は多面的であり,それらを集約した形で表現されるものとされ[16],海外では,薬物治療に対する患者の経験と満足度を評価する多面的質問票も開発されている[17]。
このような限界はあるものの,本報告は,抗線維化療法を受けているIPF患者の意識調査として,本邦では初めてのものであり,抗線維化療法を受けるIPF患者の満足度を上げ,患者に与える利益を最大限にするための重要な情報を提供するものである。患者の視点に立った薬物療法の評価は今後も重要であり,引き続き,患者との良好なコミュニケーションを築いていく姿勢が必要である。
謝辞:アンケート調査にご協力いただきました患者の方々に厚く御礼申し上げます。本論文のメディカルライティング補助は,日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社の資金提供のもとシュプリンガー・ヘルスケア,inScience Communications(鈴木裕,Ph.D.)が行った。
利益相反の有無:
冨岡洋海:(株)日本ベーリンガーインゲルハイム社より講演料
Both international and Japanese guidelines recommend antifibrotic therapy for patients with idiopathic pulmonary fibrosis (IPF), but many patients with confirmed IPF do not receive this form of treatment. To identify barriers to antifibrotic treatment in Japan, we conducted questionnaire-based surveys of IPF patients and physicians. We have previously reported on how views on IPF diagnosis and treatment compare between physicians and patients, and between physicians with different attitudes towards antifibrotic therapy. In this paper, we compare patients with positive versus negative feelings about antifibrotic therapy. Patients who received antifibrotic therapy (n = 117) were categorized into two groups based on their answers to a question about treatment satisfaction: group 1 were satisfied with antifibrotic therapy (n = 55) and group 2 were less satisfied (n = 52). There were no significant differences in demographic characteristics or disease severity between groups. A higher proportion of patients in group 2 than group 1 reported that physicians’ explanations about IPF and antifibrotic therapy were easy to understand. Patients in group 1 tended to obtain more information about IPF and atifibrotic therapy from physicians, compared with patients in group 2. These data can help to improve patient-physician communication and satisfaction with IPF treatment in Japan.
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