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表紙には新規の航空機(模型による飛行)としてionic-wind propulsionが採用されている。米国では電気飛行機も飛ばされている。これらはどう展開するだろう?
(1)免疫学
代謝物BH4は自己免疫と癌においてT細胞増殖を制御する(The metabolite BH4 controls T cell proliferation in autoimmunity and cancer) |
血漿中の無細胞DNAメチロームを用いた高感受性腫瘍検出と分類(Sensitive tumour detection and classification using plasma cell-free DNA methylomes) |
今週は地球生物の不思議カンブリア爆発の化石発掘の現在が取り上げられている。
皮膚修復における筋線維芽細胞の増殖と多様性はマクロファージによって維持されている(Myofibroblast proliferation and heterogeneity are supported by macrophages during skin repair) |
ヒト制御性T細胞における潜在型TGF-β1の提示とGARPによる活性化の構造基盤(Structural basis of latent TGF-β1 presentation and activation by GARP on human regulatory T cells) |
(1)食物アレルギー減感作
ピーナッツアレルギーに対する AR101 による経口免疫療法(AR101 oral immunotherapy for peanut allergy) |
食物アレルギー(peanut)の減感作効果の第三相プラセボ対象二重盲検臨床試験である。使用されたのはGMP製造のAR101(最軽量カプセルに0.5~1 mgのpeanut protein含有)である。投与量は順次1回peanut protein 100 mgまでを負荷した時の用量制限を評価する。負荷量600mg以上のpeanut proteinを摂取できたのは,実薬67.2%(250/372人),プラセボ4%(4/124人)であった。18歳以上の参加者では有効性は示されなかった。
こうした臨床試験は,専門外領域でわかりにくい点も多いが,Editorialを参考にすると,すでにCambridge groupがCA002を用いて減感作試験を報告しており,こうした製剤の市場は10億ドル(1,000億円以上)前後と言う。先にScience誌に,食物アレルギーの機序として,血中の抗原を血管壁樹上細胞が捕捉して,組織内のマスト細胞に提示するという斬新な報告があった(TJHack No.22)。食物アレルギーが小児期中心という事実は,結局小児期の消化能力が不十分で,消化管から食物微小粒子が血中に入る頻度が高いということを意味するのだろうか?減感作以外にも有効な食物アレルギー抑制法の開発が待たれる。
(2)肺癌臨床試験
NSCLCへの臨床試験として興味ある2論文が報告されている。
ALK 陽性非小細胞肺癌に対するブリガチニブとクリゾチニブとの比較(Brigatinib versus crizotinib in ALK-positive non–small-cell lung cancer) |
1つはALK阻害新薬でBrigatinib(Alunbrig)の第3相臨床試験で,初回投与患者におけるCrizotinibとの比較試験(ALTA-1A)である。ALK陽性頻度はNSCLC患者の2〜8%であり,米国,韓国,台湾などが参加して行われた。Brigatinib 137例,Crizotinib 138例で, PFSは前者はNRであり,後者は9.8mであった(図)。顕著な差として注目されるのは,脳転移巣へのコントロールがBrigatinibで良好である点である。ALK阻害剤として大きな期待が持たれる。
本剤は。ARIAD Pharmaceuticalsが開発した薬剤であるが,2017年2月武田製薬が買収したと,武田製薬のALTA二相試験のニュースリリースで述べられている。一方,Wikipediaによれば,BrigatinibはEGFR変異に対しても有効で,C797SのOsimertinib耐性に対しても,抗EGFR抗体(Cetuximabなど)との併用で,有効性が示唆されている。
扁平上皮非小細胞肺癌に対するペムブロリズマブと化学療法の併用(Pembrolizumab plus chemotherapy for squamous non–small-cell lung cancer) |
もう一方はICI(immune checkpoint inhibitor)として広範に用いられ始めた,Pembrolizmabと抗癌剤(Carboplatin+PaclitaxelあるいはNab-Paclitaxel)の併用臨床試験である。結果,抗癌剤との併用ではOSが15.9mで,Pembrolizmab+プラセボでは13.2mである(図)。ICIと各種薬剤との併用は多方面の臨床試験が現在進行形である。
抗癌剤併用が上乗せ効果を示した事実はどう解釈できるのか?EGFR-TKI+抗癌剤併用がOSで有意な延長効果を示したNEJ009を想い起こす。今年6月のNEJMに掲載された,Athezolizmab+Bevacizumab+chemotherapyのmedian OSは19.2m,Bevacizumab+chemotherapyでは14.7mであり,2年以上の生存者は30%近くある(TJHack No.2)。この差は再現性があるのだろうか?こうした成績を見ると,一体抗癌剤はそもそも癌組織の何に作用しているのかを考えざるを得なくなる。今後の多様なコンビネーションの積み重ねで,それらの生物学的背景が明らかになると期待される。
(貫和敏博)