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呼吸臨床
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「ほぼ週刊 トップジャーナル・ハック!」No. 24

公開日:2018.11.28


今週のジャーナル


Nature Vol. 563, No.7732(2018年11月22日)日本語版 英語版

Science Vol. 362, Issue #6417(2018年11月23日)日本語版 英語版

NEJM Vol. 379, No.21(2018年11月22日)日本語版 英語版






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肺癌臨床試験:Brigatinib(ALTA-1L)とPembrolizumab+抗癌剤(KEYNOTE-407)-そのポイントは?

●Nature

 表紙には新規の航空機(模型による飛行)としてionic-wind propulsionが採用されている。米国では電気飛行機も飛ばされている。これらはどう展開するだろう?


(1)免疫学  


代謝物BH4は自己免疫と癌においてT細胞増殖を制御する(The metabolite BH4 controls T cell proliferation in autoimmunity and cancer
 約50年前,筆者は医学部学生として市山新先生(浜松医大)の指導下で,serotonin合成系の律速酵素であるtryptophan hydroxylaseのassayをやっていた。この論文の主題であるBH4(tetrahydrobiopterin;)はその反応の補酵素として用いていた。同様に水酸基がつくmonoamine類の生合成や,最近ではNO synthaseの補酵素でもある。このBH4が免疫系細胞,T細胞の活性にも重要であるというのが,本論文の内容である。オーストリアを中心として多くのグループ研究である。
 BH4はGTPからGCH1(GTP cyclohydrolase,律速酵素)やSPR(sepiapterin reductase)を経て合成される。論文ではGCH1のKOマウスや過剰発現マウスモデルが使用されている。GCH1ノックアウトマウスではT細胞増殖が抑制され,OVA刺激にも充分反応しない。一方SPR阻害剤(SPRi3)を用いると,OVA炎症が抑制される。著者らは抗炎症の創薬を指向し, SPRi3よりQM385という化合物を誘導し紹介している。逆にBH4を過剰投与すると,T細胞が活性化し腫瘍増殖抑制が示された。BH4はまたKynurenin(tryptophan代謝産物で,AHRのligandとして免疫抑制作用がある)によるT細胞抑制も拮抗・改善する効果が示されている。
 自分が大昔に使用していた物質が,全く新しい機能示すのは,Kynurenin/IDO/AHRについてBH4/T細胞活性機能が2つ目である。研究展開の長い経過に想いがはせる。しかしBH4が直接作用する蛋白はこの論文では同定されていない。

(2)癌ゲノミクス

血漿中の無細胞DNAメチロームを用いた高感受性腫瘍検出と分類(Sensitive tumour detection and classification using plasma cell-free DNA methylomes
 積年の課題である早期ガンの血液診断に関して,新しい方法論が提起されている。
 本論文は,最近EGFR変異同定にも応用され始めたplasma cfDNA(cell free DNA)に対し,発想の転換で,これをcfDNA methylomeとして微量検出し,かつcancer-type specific methylationとして原発組織型を推測するという方法論を開発報告したカナダのユニークな研究である。
 方法論は,cfMeDIP-seq(cell free methylated DNA immunoprecipitation and high-throughput sequencing)と呼ばれるもので,CG領域のメチル化を対応抗体とmagnetic beadsでenrichし,増幅後sequencingする。Assayの安定性や外部標準としてλDNA(100ng)も使用している()。さらにこれらのsequencing dataをTCGAデータやcell line系でも同様に施行し,tSNE(t-distributed stochastic neighbor embedding)で図示し,膵臓癌,肺癌,乳癌,腎癌,膀胱癌などで2次元表示()して,その分布領域から組織由来を推測しうる可能性も示している。
 方法論的にはまだ未完成であるが,methylomeに目をつけたユニークさは,癌の早期血液診断として,将来的に臨床導入の可能性が充分あると考えられる。

●Science


今週は地球生物の不思議カンブリア爆発の化石発掘の現在が取り上げられている。


(1)炎症・線維化巣

皮膚修復における筋線維芽細胞の増殖と多様性はマクロファージによって維持されている(Myofibroblast proliferation and heterogeneity are supported by macrophages during skin repair
 皮膚の創傷治癒に関与する細胞群を広範に解析したYale大学からの報告がArticleになっている()。
肺線維症研究の初期に線維化巣は創傷治癒過程としての理解であったこと思い出す。しかし皮膚でのrepairとして膠原線維を産生する細胞にはどういうものがあるのか?これらはFACS解析では多様なMyofibroblastからなるという。その1つがadipocyte precursor (APs)であり,これを活性化するのがCD301b+(C-type lectin domain family 10 member B; CLEC10B)macrophageである。このmacrophageからはIGF-1とPDGF-C(A,BではなくC)がシグナルとして放出される。
 ユニークな解析はagingによる差を検討している点である。Aged mouseの創傷部位ではまず細胞種類やその数が少なくなる。歳をとると傷が治り難いのも当然である。しかしそれを制御している機構はこの論文では明らかではない。
 研究はFACSによる細胞分画とその発現RNA解析であるが,CD番号で記載(現在ではCD371まで登録)されているので,蛋白質としてのイメージが把握しにくい点がある。肺の線維化巣でも多様なmesenchymal細胞が見出されるという報告がある(PNAS  2011; 108: E1475-83)。IPFの診断にbiopsyが要求されるならば,病理組織像と同時に,こうした細胞レベルの解析とRNA解析も行うべき時代になっているのではないか?そういう目で読解すべき論文だろう。

(2)蛋白分子結晶解析

ヒト制御性T細胞における潜在型TGF-β1の提示とGARPによる活性化の構造基盤(Structural basis of latent TGF-β1 presentation and activation by GARP on human regulatory T cells
 TGF-β1は免疫抑制作用をもつが,その実際の分子形態が,これらの構造を認識する抗体を含めて結晶解析として明らかにした論文である。TGF-β1はlatent formとして存在し,極めて局所で放出される。これらに関わる蛋白群はLAP(latency associated peptide, dimer),mTGF-β1(mature TGF-β1, dimer),GARP(glycoprotein A repetitions predominant, Treg細胞表面に存在),そしてこれらのlatent formを活性型として放出する引き金となるintegrinαVβ8である()。
 よくマンガでlatent formが描かれているが,実際はどうなんだろうという疑問が解けるとともに,その特異な,鞘に入ったようなlatencyの生理的不思議さをいまさらながら考えさせられる。


●NEJM


(1)食物アレルギー減感作


ピーナッツアレルギーに対する AR101 による経口免疫療法(AR101 oral immunotherapy for peanut allergy

 食物アレルギー(peanut)の減感作効果の第三相プラセボ対象二重盲検臨床試験である。使用されたのはGMP製造のAR101(最軽量カプセルに0.5~1 mgのpeanut protein含有)である。投与量は順次1回peanut protein 100 mgまでを負荷した時の用量制限を評価する。負荷量600mg以上のpeanut proteinを摂取できたのは,実薬67.2%(250/372人),プラセボ4%(4/124人)であった。18歳以上の参加者では有効性は示されなかった。

 こうした臨床試験は,専門外領域でわかりにくい点も多いが,Editorialを参考にすると,すでにCambridge groupがCA002を用いて減感作試験を報告しており,こうした製剤の市場は10億ドル(1,000億円以上)前後と言う。先にScience誌に,食物アレルギーの機序として,血中の抗原を血管壁樹上細胞が捕捉して,組織内のマスト細胞に提示するという斬新な報告があった(TJHack No.22)。食物アレルギーが小児期中心という事実は,結局小児期の消化能力が不十分で,消化管から食物微小粒子が血中に入る頻度が高いということを意味するのだろうか?減感作以外にも有効な食物アレルギー抑制法の開発が待たれる。


(2)肺癌臨床試験

 NSCLCへの臨床試験として興味ある2論文が報告されている。


ALK 陽性非小細胞肺癌に対するブリガチニブとクリゾチニブとの比較(Brigatinib versus crizotinib in ALK-positive non–small-cell lung cancer

 1つはALK阻害新薬でBrigatinib(Alunbrig)の第3相臨床試験で,初回投与患者におけるCrizotinibとの比較試験(ALTA-1A)である。ALK陽性頻度はNSCLC患者の2〜8%であり,米国,韓国,台湾などが参加して行われた。Brigatinib 137例,Crizotinib 138例で, PFSは前者はNRであり,後者は9.8mであった()。顕著な差として注目されるのは,脳転移巣へのコントロールがBrigatinibで良好である点である。ALK阻害剤として大きな期待が持たれる。

 本剤は。ARIAD Pharmaceuticalsが開発した薬剤であるが,2017年2月武田製薬が買収したと,武田製薬のALTA二相試験のニュースリリースで述べられている。一方,Wikipediaによれば,BrigatinibはEGFR変異に対しても有効で,C797SのOsimertinib耐性に対しても,抗EGFR抗体(Cetuximabなど)との併用で,有効性が示唆されている。



扁平上皮非小細胞肺癌に対するペムブロリズマブと化学療法の併用(Pembrolizumab plus chemotherapy for squamous non–small-cell lung cancer

 もう一方はICI(immune checkpoint inhibitor)として広範に用いられ始めた,Pembrolizmabと抗癌剤(Carboplatin+PaclitaxelあるいはNab-Paclitaxel)の併用臨床試験である。結果,抗癌剤との併用ではOSが15.9mで,Pembrolizmab+プラセボでは13.2mである()。ICIと各種薬剤との併用は多方面の臨床試験が現在進行形である。

 抗癌剤併用が上乗せ効果を示した事実はどう解釈できるのか?EGFR-TKI+抗癌剤併用がOSで有意な延長効果を示したNEJ009を想い起こす。今年6月のNEJMに掲載された,Athezolizmab+Bevacizumab+chemotherapyのmedian OSは19.2m,Bevacizumab+chemotherapyでは14.7mであり,2年以上の生存者は30%近くある(TJHack No.2)。この差は再現性があるのだろうか?こうした成績を見ると,一体抗癌剤はそもそも癌組織の何に作用しているのかを考えざるを得なくなる。今後の多様なコンビネーションの積み重ねで,それらの生物学的背景が明らかになると期待される。


(TN)


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