企画:藤倉雄二
古来より,季節性に流行・強い伝染力で急速に集団感染をおこし,急激な発熱,上気道炎症状に加え,時として筋肉痛や関節痛など全身症状を呈する一過性の疾患が知られていた。この疾患はインフルエンザと呼ばれ,多くの歴史的資料に流行の記録が残されている。このインフルエンザ流行の中でとりわけ最大・最悪とされるのが1918年から1920年にみられたパンデミック(スペインインフルエンザ)である。全世界で数千万人,日本でも385,000人が死亡したもと言われ,その臨床像の解析や原因微生物の究明などについて数多くの論文が残されている。
2018年はスペインインフルエンザ流行から100年にあたる年である。この100年でウイルスの理解も進み,治療,ワクチンに代表される予防法も目覚ましい進歩を遂げた。しかし,現在でもインフルエンザの制御は困難であり,冬季の流行や施設内でのインフルエンザアウトブレイクといった社会上・医療上の問題は解決されていない。むしろ,高病原性鳥インフルエンザや新型インフルエンザ等,通常の季節性インフルエンザ以外にも注視すべきものが多くなりつつある。
今回の特集では,スペインインフルエンザ流行から100年目を迎えたのを契機に,わが国のインフルエンザ専門家である先生方にお願いし,過去,現在,未来への展望を執筆していただいた。1つの区切りとして,あらためてインフルエンザについての理解を深めたい。
■特集目次
e00031 スペインインフルエンザ流行を振り返る:藤倉雄二
e00032 スペインインフルエンザの臨床像:1918年当時の入院診療録の評価と2009年新型インフルエンザの対比から:工藤宏一郎
e00034 鳥インフルエンザの最新疫学事情とパンデミックへの可能性:間辺利江
e00035 予防と治療の進歩:予防と治療における最近の話題:田村大輔
Clinical characteristics of Spanish influenza – Evaluation of medical charts in 1918 and comparison with influenza pandemic in 2009
Koichiro Kudo*
*Yurin Hospital,Waseda University
Keywords:スペインインフルエンザ,重症性リスク,肺音(不連続性ラ音),呼吸数,高熱持続,二相性熱型,基礎疾患,トリアージ/Spanish influenza, risk factors, disease severity, adventitious discontinuous lung sound,respiration rate, continued high fever, di-phasic fever, underlying diseases, triage
呼吸臨床 2018年2巻7号 論文No.e00032
Jpn Open J Respir Med 2018 Vol. 2 No. 7 Article No.e00032
DOI: 10.24557/kokyurinsho.2.e00032
掲載日:2018年7月13日
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